青少年活動
2026年07月21日 07:33
夏休みになると、子どもたちを連れてキャンプやスポーツ、野外活動などへ出掛ける機会が増えます。こうした行事で最も重要なのは、楽しいプログラムを作ること以上に「全員を無事に家へ帰すこと」でしょう。ところが、子どもの引率をしていると、大人側の「昔からこうしている」「自分が子どもの頃はこうだった」という知識が、現在の医学的な常識とは違っているケースがあります。
さらに難しいのは、具合の悪い子どもを目の前にすると、「何かしてあげなければ」と思ってしまうことです。
しかし、子どもの安全管理では、善意で何かをすることが必ずしも正解とは限りません。むしろ重要なのは、以下を事前に決めておくことだと思います。
「自分たちで対応してよい範囲はどこまでなのか」
「どの時点で保護者に連絡するのか」
「どの時点で医療機関や119番に委ねるのか」
そんなわけで、イベント会社スタッフとして心がけている夏の子どもキャンプ留意点をメモ的にまとめてみました。
まず夏の活動で最も注意しなければならないのが熱中症です。ここでよく登場するのがOS-1などの経口補水液です。
OS-1は普通の清涼飲料水ではありません。公式には「軽度から中等度の脱水症」における水分・電解質補給に適した病者用食品とされており、脱水を伴う熱中症に使用できるとされています。
逆に言えば、重度の熱中症になった子どもを「OS-1を飲ませて様子を見よう」と考えるのは危険です。自力で水分を飲めない、意識がおかしいといった状態なら、厚生労働省もすぐに救急車を呼ぶよう案内しています。広告にも「軽度から中等度の脱水症」と書かれています。
よく見るのが、熱中症を疑われるお子さんの「首だけを冷やす」方。厚生労働省は「涼しい場所へ移し」「衣服をゆるめ」「首の周り/脇の下/足の付け根などを冷やす」と案内しています。重要なのは「首だけ冷やして終わり」ではなく、体から熱を逃がしながら状態を観察することです。
また経口補水液は、一般的なスポーツドリンクよりナトリウムやカリウムを多く含んでいます。脱水症でない健康な人が日常の水分補給として飲むことを目的としたものではありません。また、一時に大量に飲むとナトリウムの過剰摂取になる可能性もあります。
子どもは大人より熱中症への注意が必要です。日本小児科学会も、小児は体温調節の特徴などから重篤な熱中症を来しやすいことを指摘しています。環境省も、子どもを熱中症になりやすい人として挙げ、暑さ指数(WBGT)などを確認し、状況によっては運動やイベントそのものを中止/延期/変更する判断を管理者に求めています。
ここが引率者として非常に重要なところです。熱中症対策とは「倒れた子どもをどう助けるか」だけではありません。本当の安全管理は「今日は暑すぎるから中止する」「予定していた活動時間を短くする」「予定より休憩を増やす」という判断を、事故が起こる前にできるかどうかなのです。
次に塩飴です。「夏だから塩飴を配っておけば熱中症対策になる」という考え方も注意が必要です。汗を大量にかく環境では、水分だけでなく塩分も失われるため、水分と塩分の補給自体は重要です。しかし、塩飴を食べれば熱中症にならないわけではありません。
商品によって成分は違いますが、多くは糖類を主体とした飴に食塩などを加えた食品です。したがって、「熱中症対策だから何個でも食べていい」と子どもに自由に渡すような運用は避けた方がよいと思います。
例えばよく見かける「カバヤ塩分チャージ」の成分は「砂糖(国内製造)、ブドウ糖、水飴、食塩、乳糖/クエン酸Na・・・」となっていて、結構な量の糖分も含まれています。
工事や建設現場などでは、熱中症対策として塩飴が用意されていることがあります。しかし、塩飴はあくまで食品です。「熱中症対策だから」と何個も食べればよいものではありませんし、水分補給や休憩、暑さを避ける対策の代わりになるものでもありません。
大切なのは塩飴の数ではなく、水分を取れているか。食事を取れているか。長時間暑い場所にいないか。休憩を取っているか。体調の悪い人はいないか。という全体管理です。ちなみに私のイベント現場では、従事者や参加者の塩分&糖分管理が出来ないため、塩飴の類は一切用意していません。
さらに私が子どもの引率で特に重要だと思うのが「薬」の扱いです。
例えば、「頭が痛いから鎮痛剤を飲ませよう」「お腹が痛いから胃腸薬を飲ませよう」「虫に刺されたから、この薬を塗っておこう」といった判断を、引率者が自分の判断だけで行ってよいのでしょうか。
子どもには持病があるかもしれません。アレルギーがあるかもしれません。すでに別の薬を飲んでいるかもしれません。薬の飲み合わせの問題もあります。
したがって、引率者が常備薬を持って行くことと、引率者の判断で子どもに薬を飲ませることは別問題です。
私自身は、原則として常備薬は最終手段と考えています。まず本人が薬を持参しているか確認し、次に保護者へ連絡する。市販薬などを使用する必要がある場合も、可能な限り保護者や医療関係者に確認する。これを自分なりのルールにしています。
傷薬/虫よけ/虫刺され薬についても、常備薬を引率者独自の判断で使用することは原則として行っていません。
もちろん、実施前に保護者から持病/アレルギー/服薬状況などを確認し、子ども本人が持参する薬についても、誰が、どのタイミングで、どのように使用するのかを事前に決めておくべきだと思っています。
生命や身体に関わる緊急事態では119番、事件や行方不明など警察の対応が必要な場合には110番への通報を優先させるのは当然です。
あと子どもの搬送について。
例えば活動中に子どもの体調が悪くなった場合、「病院まで車で送ってあげよう」というのは引率者としての善意です。しかし、ここでも一度立ち止まる必要があります。
その子どもは本当に自家用車で運んでよい状態なのでしょうか。移動中に急変したらどうするのでしょうか。運転している引率者が子どもの状態を観察できるのでしょうか。そして、病院へ向かう途中で交通事故が起きたらどうなるのでしょうか。
これは単純に「事故を起こしたら引率者が必ず全責任を負う」と一律に言える問題ではありません。事故の状況、運転者の過失、団体との関係、加入している自動車保険や行事保険などによって責任関係は変わります。
だからこそ、事故が起きてから責任論を考えるのではなく、「子どもの個人搬送を認めるのか」「誰の車を使うのか」「保護者の同意をどうするのか」「緊急時は119番を優先するのか」「団体としてどの保険に加入しているのか」を行事の前に決めておく必要があると思います。
特に重症の可能性がある子どもを「救急車を呼ぶほどではないだろう」と自己判断して自家用車に乗せることには慎重であるべきです。
ただし、どんなイベントでも緊急時に使用できる車両を用意しておくことは重要です。病人やけが人を搬送するリスクがあるから運ばないという話ではありません。常に必要な移動手段を確保した状態にしておき、その子どもの状態や緊急性に応じて、救急車を要請するのか、保護者に迎えを依頼するのか、車両で医療機関へ向かうのかを判断するという話です。
子どもの引率で一番怖い言葉は「これくらいなら大丈夫だろう」、そしてもう一つ怖いのが「昔はこれで大丈夫だった」です。
医学も救急対応も安全管理も変わっています。「今まではこうだった」「昔はそうだった」は、それを続ける理由にはなりません。
子どもの安全を守るために必要なのは、何でも自分たちで解決できる引率者になることではないと思います。自分たちで対応できること。保護者に確認すべきこと。医療関係者に委ねること。119番を呼ぶべきこと。その境界線を理解していることの方が、はるかに重要です。
夏休みの行事では、事故が起きないことが一番です。しかし「事故を絶対に起こさない」ことはできません。海やプールでは溺水事故が起こる可能性があります。山では転倒や滑落の危険があります。地域によっては熊やイノシシなど野生動物と遭遇する可能性もあります。
どれだけ対策をしてもリスクを完全にゼロにすることはできませんが、その可能性をできる限り小さくするのが安全管理です。
だからこそ、事故を予防する仕組みを作り、それでも何か起きたときには、引率者個人の経験や勘に頼らず、事前に決めたルールに従って行動する。「善意で何とかする」のではなく「組織として安全を管理する」。多くの子どもを預かる活動ほど、この考え方が必要なのではないでしょうか。
ちょっとだけメモ書きしてみました。もっと思い出したらまた書きたいと思います。
2026年05月10日 03:05
福島県郡山市の磐越自動車道で、高校生20人を乗せたマイクロバスがガードレールに衝突し、男子生徒1人が尊い命を落とした事故から数日が経過しました。概要は以下のとおりです。・バス依頼者:北越高校ソフトテニス部顧問
・バス手配会社:蒲原鉄道(新潟県五泉市)
・使用車両:レンタカーのマイクロバス
・レンタカー借受人:蒲原鉄道営業担当
・運転手の手配:蒲原鉄道営業担当が個人的に募集
この話しですが、私の感覚で書かせていただくと「よくある話し」です。まだバス会社に一定の費用を支払って移動手段を手配しているだけマトモな事例に思えます。
青少年活動における移動交通手段は様々です。ただ間違いないのはマトモとは思えない手段が横行していること。ボランティア指導者の保有する車や保護者の車で移動するのは日常茶飯事。近所の企業が社員送迎用マイクロバスを出したりもあります。
学校やスポーツ団体でバスを保有して、その運転をボランティアに依頼するのは当たり前のようにありますし、レンタカー会社にドライバー紹介を含めて依頼するといったパターンも普通です。
とにかく青少年活動における移動交通手段の確保は、少年野球や少年サッカーといったレベルから高校生レベルでの活動に至るまで必須で、それにかかる費用低廉化のため、多くの方々が苦労していることと思います。
「車を出してくれた保護者に謝礼を払おう」なんてのがあればマトモなほうで、「まず保護者や指導者はミニバンを買って子供達の送迎をするのは当たり前」なんて団体も普通にあります。
私が直近でマイクロバスをバス会社に依頼した時は、今年3月の静岡県伊東市で午後1時から午後5時の利用時で約7万円。6月下旬に新潟県三条市で計画中の手配では、午前10時から午後5時までのチャーターで11万円強。どちらもドライバーは1名です。
ただ、青少年活動でも高校生レベルとなれば、こんな短い時間の拘束は稀です。関東の高校で千葉への日帰り遠征となると朝6時集合で3時間以上の移動をして夕方まで現地活動。帰りも3時間以上かけて20時着といった感じです。
これをバス会社に依頼すれば、バスの拘束時間が出発前後1時間として5時から21時の16時間。貸切バスに関するルール厳格化によって運転手さんが2名必要で15万円超となるでしょう。
スポーツ強豪校ともなればこの種の遠征が日常茶飯事。宿泊遠征もあります。部活動の顧問だったら保護者の負担増になるので、なんとか安くする方法が無いかと模索するのも分からなくありません。
一般的にマイクロバスのレンタカー代は1日4〜5万円。運転手の謝礼が時給2千円として3万円。あとは燃料費、諸経費を合わせれば、9〜10万円は下らないでしょう。それでも数万円は安くなるわけです。
正規の手配:約15万円〜(16時間拘束・2名体制)
今回の手配:約9〜10万円(レンタカー+謝礼) 差額:約5万円
営業担当の方は、テレビ取材等に対し「高校側から安く済ませたいのでレンタカーで送迎してほしいと依頼された」といった趣旨の説明をしています。そして学校側はそんなことは言っていないと反論しています。
事実は警察が調べることであり私には何も分かりません。ただ、バス会社の営業担当者なら普通のバス手配依頼があったらレンタカーなんて手配するわけが無いのは誰でも分かることです。そして今回が初めてでは無いはずなので、どちらがウソをついているかはスグに判明するでしょう。
レンタカーは営業担当者が自身の名義で借り、運転手は知人の知人で二種免許は持っていなかった上に、レンタカー会社に運転者登録していなかった可能性もあるようです。
さらに運転手が普段は杖をついて歩くほど足腰が弱っていたとの証言もあります。マイクロバスという大型の車両を、生徒の命を預かって運転できる状態ではなかったかもしれません。
ただ、この運転手は高校の運動部顧問として活動していたことがあるようなので、元スポーツ指導者として、安価な方法でのスポーツ活動における移動手段を探していた高校生や顧問のために一肌脱いだのかもしれません。
なんにせよ営業担当者の方はバス会社でプロとして安全を売る立場にある以上、どのような理由があれ、このような手配が許されることではありません。この種の依頼が何年も続いていたとしても、コンプライアンス視点で断る必要もあったでしょう。
「安さ」を追求した結果、失われたのは将来ある若者の命でした。もし本当に費用の抑制が目的だったとしても、その代償があまりにも大きすぎます。
こうした杜撰な手配を許してしまった組織体制も問題ですが、青少年活動に蔓延する「これくらいなら大丈夫だろう」というユルユルの移動交通実態こそが、今回の悲劇を生んだ真犯人ではないでしょうか。
失われた命はかえって来ませんし重症の方には将来障がいが残る可能性もあるでしょうから、せめて、学校や会社の賠償責任保険やレンタカーの自動車保険が何らかの形で適用され、被害者の方々への補償が滞りなく行われることを切に願います。
亡くなられた生徒さんのご冥福を心よりお祈りするとともに、負傷された方々が1日も早く生活復帰できることを祈っております。
子供達の命を預かるボランティア活動に従事する一人として、今回の事を教訓にして、安全第一で移動計画を構築することを心がけたいと思っております。
2026年03月19日 05:49
私自身は若い頃にアウトドアレクリエーションという研修をカナダの大学で受け、それをベースに旅行会社のスタッフとしてキッズキャンプの受け入れをしていました。日本は長い休みが夏休みしか無いので、基本的にキッズキャンプは夏にしか開催されず、結果としてウインタースポーツでは無くマリンスポーツや山遊びが中心となります。
例えばハイキング/マウンテンバイク/乗馬では通るコースの木々にカラーテープを巻き迷わないようにするとか、カヌーやボート漕ぎでは参加者全員にヘルメットとライフジャケットを着用させる等の配慮をおこないます。
事故発生パターンは決まっていて、ハイキングなら歩いていて転倒したり滑落する、マウンテンバイクなら転倒する、乗馬なら馬が暴れる、カヌーやボートなら転覆するといった感じです。
得てして子ども同士でふざけて事故が発生。安易に対応しようとして被害拡大もパターン。転倒して帽子が斜面に落ち、それを拾いに行って滑落し、それを助けに行った大人が一緒に滑落といった場合も多く、船の転覆ではパニックに陥って水を飲んでしまう例も多々あります。
あとは海の場合は離岸流で流される言う場合もありますし、海・川ともにあるのが風・水・潮の流れを読み違えて戻れないといった場合もあります。
なによりもまずいのが通報の遅れ。何か事故が発生した際に捜索・救助要請することが必須なのに誰もしないという例が多いのも事実です。
今回の事故ですが、運営していたのが「ヘリ基地反対協議会」という任意団体。依頼したのが「同志社国際高校」らしいです。普通の旅行会社が抗議活動をしている任意団体に遊覧を発注しないでしょうから、誰かがこの団体の知り合いで「乗せてあげるよ」と言われて依頼したのでしょう。
船の利用に当たり「使用料という形で船員らに5千円ずつ支払っている」との話しもあったのですが、金額が安すぎて本当に5千円しか払っていないのか、生徒1人につき5千円を払っているかは分かりませんでした。ただ1人5千円だと高すぎます。
だとしても、ヘリ基地反対協議会の記者会見を見ている限りでは信頼できるツアープログラムを運営できそうには見えませんし、船も平和丸が25フィート程度?、不屈丸が20フィート程度?に見えるので、小さな船に定員満載していたのでしょう。
しかも波浪注意報下でサンゴ礁に入ったらしいので最初から危ない。危険予知の観点で言えば危険。さらに船は観光船や遊漁船の登録もしておらず、船客傷害賠償責任保険にも加入してないみたいなので事故の補償はゼロ。
そんなことってあり得るんですね。私共は移動販売車にランチ営業の場所紹介もしているのですが、車検証/免許証/営業許可証/車内外の写真/設備図/PL保険証券/提供メニューを提示していただいた上で、事故発生時の責任についての同意書にサインしてもらってから出店許可を出します。もちろん私共はその上で会場全体のPL保険にも加入してます。
個人的には安全配慮義務違反があったように感じますし、最初の船が転覆した際に通報したかどうかも不明だし、転覆した船に引率の教諭が乗って無いのも意味不明。さらに生徒を乗せたままの船で転覆した船を救助しようと同じ場所へ向かい全員で転覆というのもずさんです。
お子さんや運行していた船長の人命が失われると言う重大事故だけに、私共の活動にも間違いなく大きな影響を及ぼすと思います。どんなアクティビティをやる場合にはどんなチェックリストを履行しなければならないかを、しかるべき団体で協議してご提示いただければと思っております。
お亡くなりになられた方のご遺族や周囲の方々におかれましては、まだまだショックが癒えてない状況だとは思いますが、謹んで哀悼の意を表したいと思います。









