買い占め

2026年05月14日 04:36

sin最近、ニュースでよく耳にする「ナフサは確保できているが、流通の目詰まりが問題だ」という話し。また政府はコメ不足の時と同じ説明をしています。ただこれは、そもそもの「経済の理屈」を無視しているとしか思えません。

コメ不足の際、私はこのブログでも「コメはあるけど値上がりしたから流通していない」と書きました。発生と解消は以下のような流れを辿ったと思われます。

第一段階:流通量の減少で米価格が上昇して小売店が仕入れを控える。
第二段階:店頭から米が消え、不安になった消費者が「買い占め」に走る。
第三段階:消費者が高くても買うようになり品物が店頭に並び始める。
第四段階:儲かると踏んで買い集めた問屋が在庫を一気に放出し、価格が落ち着く。

ナフサは、私たちが日常で使うビニールやプラスチックの源流です。その価格が500ドル台から800ドル台へと跳ね上がりました。

原材料費がこれほど爆騰したら、製品価格に反映できなければ赤字になるだけですから、各メーカーが買い控えるのは当たり前です。しかもホルムズ海峡が解放されればナフサ価格が下落する可能性があるわけですから、当然様子見という企業もあるでしょう。

なぜホルムズ海峡閉鎖前にあったナフサの価格がすでに上昇しているのか?便乗値上げだ!という話しもよく耳にします。しかしこの意見は「再調達価格」の視点を無視しています。

たとえ手元にある在庫が「安かった時期」に仕入れたものであっても、次に原料を補充する(再調達する)時は、今の高い市場価格です。もし今の在庫を安く売ってしまうと、次に仕入れる高い原料を買う資金が手元に残らず、ビジネスが詰みます。

つまり、今の在庫を高く売るのは「便乗値上げ」ではなく、「事業継続の基本形」なのです。

現状、プラスチック製品が市場から消えつつあるのは、単純な話です。原材料が高すぎるから仕入れない。仕入れないから製品が作れない。高く売れる保証が無ければリスクを負ってまで流通させない。企業は「作れない」のではなく「作らない」という選択をしているのだと思うのです。

これが、政府の言う「目詰まり」の正体。物理的に物が通らないのではなく、「価格の折り合いがつかないから誰も動かない」という、経済的停止状態なのではないでしょうか。物はあるけれど、高すぎて誰も手を出せず、結果として棚から消えると言う状態なわけです。

自動車整備や手術には欠かせないニトリル(ゴム)手袋。製品に占める原材料費の割合は50%以上です。住宅建設には欠かせないビニールパイプもそう。これも原材料費の割合はニトリル手袋以上です。

原材料比率が50%超えという事は、ナフサ価格60%アップなら、これらの製品は理論上は製品価格を30%以上値上げしなければ利益が削られてしまうのです。ただ30%の値上げでは利益率が低下しますので、最低35%アップとなります。

ましてや成分のほぼ100%がナフサ由来原料のシンナーなんて価格が上がって当たり前。だけどただの薄め液だから、塗料メーカーは「値上がりしたら誰も買わない」と思うから、生産調整するのは当たり前。結果として一時的な品不足になりました。

個人的には政府が言う「流通の目詰まり」は言葉のすり替えだと思ってます。流通の流れに何段も問屋があり小売を通じて消費者に届く構造の日本では、「高い原材料を認めて、製品価格に転嫁し、消費者がそれを受け入れる」というプロセスを経ない限り、品不足は解消されないのではないでしょうか。

「原材料はあるのに物がない」のは物流の目詰まりのせいではありません。「適正な価格で取引できない状況下では様々な物が止まる」この原則を政府は理解した方が良いかもねーと思っている私です。

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