自衛官
2026年06月16日 19:27
世の中を大騒ぎさせるほどではないものの、それなりに炎上しているのが、6月15日の参議院決算委員会での古賀千景参議院議員(立憲民主党)の発言です。質疑の映像を見ましたが、正直なところ質問の趣旨がよく分かりませんでした。準備不足だったのか、あるいは言いたいことをうまく整理できていなかったのか。本来何を問題視したかったのかが伝わってこなかったのです。
発言者:古賀千景 参院議員(立憲民主党)
発言日時:2026年6月15日 参議院決算委員会
問題となった発言:
「私も教えた子がいっぱい自衛隊にいるんです。いっぱい苦しんでますよ。でも、分かってほしいのは、自衛隊に行く子供たちって、経済的に厳しい子どもたちが行くんですよ。豊かな子供たちは、自衛隊とかなりませんよ」(発言直後に謝罪)
質疑のテーマ:防衛省が小中学校向けに配布している防衛白書冊子「まるわかり!日本の防衛」について。
古賀議員は現在59歳。私とほぼ同世代です。大学卒業後は福岡県内の小中学校教員として勤務し、その後は日教組で役員を務め、日教組の組織内候補として2022年の参議院選挙で比例代表から初当選したそうです。
しかし、今回の発言については首をかしげざるを得ません。そもそも自衛隊じゃなく自衛官です。
「自衛隊に行くのは経済的に厳しい家庭の子どもたちだ」という主張には客観的な根拠が見当たりませんし、「豊かな家庭の子どもたちは自衛隊にならない」という発言に至っては、どのような調査や統計から導き出された結論なのか知りたいところです。
むしろ私の周囲を見る限り、自衛官にはさまざまな家庭環境の出身者がいます。親が自衛官というケースも珍しくありません。自らの職業に誇りを持ち、その仕事や待遇を理解しているからこそ、子どもにも勧めるのでしょう。
自衛官は(特別)国家公務員であり、安定した給与体系や福利厚生があります。防衛省共済組合の共済制度の中には俗に自衛隊銀行とも呼ばれる高金利の貯金制度に低金利のローン制度まである充実ぶりで、堅実に資産形成をしている隊員やOBの方も少なくありません。
もちろん、自衛官の仕事は決して楽ではありません。災害派遣、長期訓練、厳しい規律、そして有事への備えなど、多くの負担を伴います。
しかし、その一方で航空機や艦艇の運用、通信やIT、医療、語学、国際協力など、一般企業では得難い経験を積める職場でもあります。
私は、公務員の中でも自衛官ほど世界を感じられる職業は少ないと思っています。アメリカ軍との共同訓練や多国間演習への参加、国際平和協力活動など、視野を大きく広げる機会が数多くあります。これは他の公務員にはなかなかない魅力でしょう。
例えば、ブラスバンドや声楽を続けてきた人にとっては、自衛隊音楽隊はプロとして音楽に携わることができる数少ない進路の一つです。国賓来日や国家的行事での演奏を担当することもあり、音楽家として非常に名誉ある舞台に立つ機会もあります。
航空分野でも同様です。パイロットを志す人にとって、自衛隊には大型輸送機や哨戒機、戦闘機、救難ヘリコプターなど、民間では操縦できない航空機に乗る機会があります。航空機ファンや飛行機乗りを目指す若者にとって、魅力的な進路の一つと言えるでしょう。
自衛官という職業は、単に安定した公務員というだけではなく、専門技能や高度な技術を身につけながら、日本や世界を舞台に活躍できる可能性を持った仕事でもあるのです。
今回の質疑で本来問われるべきだったのは、「防衛省が作成した子ども向け教材を学校教育の中でどのように扱うべきか」という点だったはずです。
ところが、「経済的に厳しい子どもが自衛隊に行く」「豊かな子どもは自衛隊にならない」という発言によって、議論の焦点は完全に別の方向へ飛んでしまいました。
結果として、防衛教育の是非という本来のテーマよりも、発言そのものへの批判が中心になってしまったのは残念なことです。
私は、子どもたちが将来の職業を考える際、自衛官という選択肢について正確な情報を知る機会があってよいと思っています。
アメリカを訪れると、大規模ショッピングセンターの中に軍のリクルートオフィスが入居しているのをよく見かけます。日本人からすると少し驚く光景ですが、現地ではごく普通の存在です。
そこには軍で身につけられる技術や資格、教育制度を紹介するパンフレットが並んでおり、「経済的に余裕がなくても高度な教育を受けられる」「専門技術を習得できる」「パイロットや医療分野などのキャリアにつながる」といった内容が積極的にアピールされています。
実際、アメリカ軍は大学進学支援制度や奨学金制度が充実しており、軍務経験をキャリアアップの機会として捉える若者も少なくありません。
私はこの考え方には一理あると思っています。軍隊や自衛隊を単なる国防組織としてだけではなく、若者が専門技能を身につけ、社会的に成長するための場として評価する見方もあってよいのではないでしょうか。
そう考えると、防衛省が子ども向けに自衛官の仕事を紹介すること自体は、必ずしも否定されるべきものではないと思います。大切なのは、正確な情報を伝えたうえで、将来の選択肢の一つとして知ってもらうことではないでしょうか。
自らの意思で「国を守(護)る」という選択をした自衛官や元自衛官を愚弄するような発言は、国会議員としていかがなものかという世論の動きには、何も反対するつもりはありません。ただ、国会議員に変な人がいるのは当たり前なので、いちいち叩く気もありません。
ただ単純に、義務教育の時から自衛官という職業を偏見なく知り、将来の進路の一つとして自由に選択できる機会だけは、未来を支える若者に与えられる社会であってほしいと私は思っております。
2026年06月13日 06:06
日本の平和と安全を文字通り命がけで守っている自衛隊員。大規模な災害が発生すれば、24時間体制で活動し、時には72時間戦闘継続訓練のような過酷な任務や訓練に従事することもあります。しかし、こうした長時間勤務に対する処遇については、あまり知られていない現実があります。誤解を恐れずザックリ書くと「残業代が支給され無い」のです。
民間企業であれば、残業や休日勤務、深夜勤務には法律に基づいて割増賃金が支払われます。しかし、自衛隊員は一般の会社員とは異なる法体系の下で勤務しており、その勤務実態と処遇の間には大きな隔たりがあると言われています。
自衛隊員の給与は、基本給にあたる俸給を中心として構成されており、その中には一定の超過勤務負担も考慮されているという考え方が取られています。一方で、実際の勤務時間すべてが民間企業のような形で時間外勤務手当の対象になるわけではありません。
例えば、72時間戦闘継続訓練のような過酷な訓練に参加したとしても、その時間がそのまま残業時間として積み上がり、民間企業と同様の割増賃金として支払われる仕組みにはなっていません。
もちろん、自衛隊には災害派遣等手当や各種特殊勤務手当が存在します。しかし、それらは危険性や特殊性に対する手当であり、民間企業における時間外労働手当とは性格が異なります。
特に、総務、人事、経理、補給といった管理部門の業務は、仕事内容だけを見れば一般企業と大きな違いはありません。人事異動や予算編成、災害派遣準備、海外派遣支援などで長時間勤務が発生することもありますが、その勤務実態が十分に報われているかという点については議論の余地があります。
近年、自衛隊では慢性的な人員不足が問題となっています。募集定員を満たせない状況も続いており、隊員確保は防衛政策上の大きな課題となっています。
その原因は一つではありません。しかし、勤務の厳しさに対して処遇が見合っていないと感じる人が少なくないことも、要因の一つではないでしょうか。
では、仮に自衛隊員に対して民間企業並みの時間外勤務手当制度を導入した場合、どれほどの財政負担になるのでしょうか。
仮に月平均30時間の超過勤務があるとします。自衛官の平均的な時間単価を約2,500円と仮定し、時間外労働の割増率を適用すると、月額の時間外勤務相当額は約9万円になります。年間では約110万円です。
これを約23万人の隊員全体に当てはめると、単純計算で年間約2,500億円規模となります。実際には深夜勤務や休日勤務、災害派遣時の長時間勤務などもあるため、さらに大きな金額になる可能性があります。
もちろん、これはあくまで仮定に基づく試算です。しかし、もし勤務実態に応じた処遇を本格的に行おうとすれば、兆円単位の財政負担が発生する可能性があることは想像に難くありません。だからといって、「お金がかかるから現状のままでよい」という話にはならないでしょう。
国会では災害派遣の必要性が議論されます。国民もまた、地震や豪雨、山火事などが発生した際には自衛隊の出動を期待します。そして実際に、自衛隊員は昼夜を問わず現場で活動しています。しかし、その活動を支えているのは特殊な存在ではなく、私たちと同じ生身の人間です。
私は、自衛隊員に民間企業とまったく同じ制度を適用すべきだと言いたいわけではありません。任務の特殊性を考えれば、別の制度設計が必要な場面もあるでしょう。
それでも、「特別な仕事だから」「使命感があるから」という理由だけで、長時間勤務に対する処遇の問題を先送りにしてよい時代ではないと思います。
人材確保が難しくなっている今こそ、自衛隊員の勤務実態を可視化し、その負担に見合った処遇を実現するための議論を始めるべきではないでしょうか。
国は自衛官の勤務実態を直視し、将来に向けてより公平で納得感のある処遇制度を構築していく必要があるんじゃいかなーと思っている私です。高市総理や小泉大臣がちょっとでも思ってくれれば嬉しいです。









