社長

2026年07月09日 06:24

o「社長になれば自由とお金が手に入る」そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。少なくとも28年前の私は、そう信じていました。私自身もそう思って1998年2月の長野オリンピック終わりで独立しました。

あれから28年が経過。法人設立から21年が経過し、いよいよ22期目をスタートさせました。今分かっているのは、30歳で広告代理店を退職した時の年収を超えたことは1度も無いってこと。資金繰りは一瞬の休みも無く続き、経営は常にトラブルの連続でした。

資金繰り、人材不足、クレーム、採用、値上げ、取引先との交渉、社員の悩み・・・、会社が大きくなればなるほど、問題は減るどころか、むしろ種類が増えていきます。そんなわけで、独立から8年目の2006年には、40歳での離島移住を発表し、法人を畳む決断をしたこともありました。

結果的には完成していた六本木ヒルズと、完成間近だった東京ミッドタウンのイベントスペース開発やメディア開発というお仕事が入って来たことで、それを頑張ることになって現在に至るのですが、思い返せばいろいろありました。

1992年のバブル崩壊は「2度と来ない」といわれましたが、1995年には阪神淡路大震災の直撃を受け、1997年にはアジア通貨危機と山一證券・北海道拓殖銀行等の破綻が発生、2000年にはITバブル崩壊、翌年はアメリカ同時多発テロ事件、2008年リーマン・ショック、2011年東日本大震災と、何度もバブル崩壊はやって来ました。直近だとコロナです。

その昔は、仕事があっても入金は2〜3か月後ということも珍しくありませんでした。手形取引が当たり前で、90日手形や120日手形を受け取ることは日常茶飯事。月末締めの翌月末90日の手形だと、手元にお金が入って来るのは最大150日後。大手広告代理店も以前はそう(今は翌月現金)でした。

一方で、社員の給料、外注費、社会保険料、税金は待ってくれません。「毎日、通帳残高と支払予定表を見ている」そんな社長も決して少なく無いでしょう。私はその一人です。

金融機関は、会社の業績が悪くなってからでは融資に慎重になります。経営者の多くは資金繰りが厳しくなって、はじめて業績悪化に気づきます。業績悪化に気づいた時には融資を受けられず、結果的に破綻へ至るということは珍しくありません。

私もそんな経営者でした。決済日や給料日に現金が無く、あわててキャッシングを受けたことは1度や2度ではありません。複数の金融機関から500万円以上ものキャッシングを受けたこともありました。資金繰りは単なる数字ではありません。夜眠れなくなるほどのストレスなのです。

今の経営者は、仕事だけを見ていればいい時代ではありません。社員に起因する問題が次々発生します。突然出社しなくなる。夫婦問題でメンタルを崩す。親の介護で退職したいと言われる。経営者が「頑張って支えよう」と思えば思うほど、それらの問題すらも抱える事になります。

忙しいのに利益が残らない。材料費が上がる。電気代が上がる。人件費も上がる。それでも価格転嫁ができない。利益は出ないけど断ったら次の仕事が来ない。どうどう巡りです。

求人は求人広告を出せばいいと思っている方も多いでしょう。マイナビ・ビズリーチ・リクルートエージェント・doda・エン転職等に広告を出すごとに50万円から100万円がかかります。採用できると採用した人材の年収の30%以上を成功報酬として支払うケースも珍しくありません。そんな大金かけられますか?

請求書は発行した。納品も終わった。それでも入金されない。電話をすると、「経理のミスで来月になります・・・」そんなことを平然と言う大企業社員も少なくありません。会社は売上ではなく現金で動いています。未収金は資金繰りだけでなく、経営者の精神も大きく消耗させます。

家賃、コピー機、ビジネスホン、パソコン、クラウドサービス、固定電話通信費、携帯電話通信費、社用車・・・なんだかんだとお金は毎月出て行きます。売上が減っても、固定費だけは静かに会社を圧迫し続けます。

現場のミス。SNSでの炎上。顧客からの厳しい苦情。最後は社長が出ていくことになります。謝罪し、説明し、ときには理不尽な要求にも対応する。「なぜ自分が」そう思っても、会社の看板を背負っている以上、逃げることはできません。

会社の業績が悪くなった時、多くの社長は真っ先に自分の役員報酬を下げます。社員の生活は守りたい。取引先への支払いも止められない。だから最後は自分が我慢する。経営者なら当たり前かもしれません。でも私は法人設立後1度も賞与を受け取れたことはありません。

休日でも売上を気にする。旅行中でもメールを見る。夜中に目が覚めて資金繰りを考える。経営者は体を休めることはできても、頭を休めることが難しい職業です。しかも社員には不安を見せられず、家族にもすべてを話せない。この孤独感も、経営者ならではのものです。

仕事があるから事務所へ行ってるのに、事務所につくやいなや「パソコンの調子がおかしい」「メールの送受信ができない」等と言われることもあります。「修理屋だとでも思ってるのか?」と腹立つこともあるのですが、グッと押し殺してそれらへ対応するのも経営者です。

会社には社員がいます。その家族がいます。取引先がいます。お客様がいます。だから「辞めたい」と思う日があっても、簡単には辞められません。経営とは、数字を管理する仕事ではなく、多くの人の生活と期待を背負い続ける仕事なのだと思います。

経営者になってからの28年間、「トラブルのない日」はほとんどありませんでした。資金繰り、人材、営業、クレーム、制度変更、景気の変化、そしてコロナ。一つ解決したと思えば、また次の課題がやって来ます。

だから最近は、「トラブルが起きない会社」を目指すのではなく、「トラブルが起きても乗り越えられる会社」を目指すことの方が大切なのだと考えるようになりました。というか、企業経営はトラブルの連続なのです。

経営者とは、次々と起こる問題を一つずつ解決しながら、それでも事業を続ける人のことなんだと思うようになりました。法人設立とは、歴史を未来永劫つづけますという宣言であり、設立した以上は永続的に続ける覚悟も必要なのだと思うようになりました。

法人設立から22期目がスタートしました。これからもきっと、さまざまなトラブルが待っているでしょう。それでも一つひとつ乗り越えながら、会社を未来へつないでいきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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