疾患

2026年09月15日 03:28

スクリーンショット 2026-09-11 105229更年期障害という、加齢に伴うホルモンの変化などによって、心身に様々な症状が現れるものがあります。

昔は、一定年齢の女性が仕事中に突然怒ったり、感情的になったりすることを「女のヒステリー」などと呼ぶこともありました。今から考えると、その中には更年期に伴う心身の変化が影響していた人もいたのかもしれません。

一方で、「ある程度の年齢になった女性は仕事では使いにくい」といった見方をされることもありました。どちらも、今から考えればずいぶん乱暴な話です。

今から20年近く前、歌手・タレントとして活躍していた泰葉さんが、当時すでに離婚していた元夫の春風亭小朝さんを、自身のブログで「金髪豚野郎」と呼び、大きな話題になったことがありました。

当時の泰葉さんは40代後半。テレビのワイドショーでは連日のように取り上げられていましたが、私はその頃、「これは更年期の影響もあるんじゃないの?」と思っていました。ただ、当時は今ほど更年期という言葉や、その症状について広く理解されていたわけではなく、泰葉さんが突如として感情的になったかのような報道が多かったように記憶しています。

もちろん、実際にあの一連の言動と更年期に関係があったのかどうかは分かりません。後に泰葉さん自身が精神疾患について公表していますので、なおさら外部の人間が「あれは更年期障害だった」と決めつけることはできません。

自分自身も60歳近くなり、周囲にも同世代や少し若い人が増えてくると、加齢による心身の変化について考える機会が増えてきました。そして、あらためて調べてみると、更年期というのは私が思っていたより、はるかに複雑なものでした。

私が最初にこの問題について習ったのは、20代後半で受けた男女雇用機会均等法に関する研修でした。それから30代前半での管理職研修、40代での男女相互理解に関する研修と、これまで3回ほど学ぶ機会がありました。

内容は毎回おおむね同じです。月経に伴う体調変化、妊娠および不妊に関すること、乳がんなどの女性特有の病気、そして更年期です。

女性の場合、閉経前後の時期には女性ホルモンであるエストロゲンが大きく揺らぎながら低下し、それに伴って様々な心身の不調が現れることがあります。その中で、日常生活に支障をきたす状態が更年期障害とされ、現在ではホルモン補充療法(HRT)など様々な治療法が用意されている。研修では、だいたいそんな説明を受けてきました。

ただ、私が最も重要だと思うことについては、どの研修でも教えてくれませんでした。それは「誰が・いつ・どうやって本人に伝えるのか」ということです。

私の世代なら、昔から「命の母A」のCMを大量に見てきたので、「一定年齢の女性向けの薬がある」ということ自体は知っている人が多いと思います。

ちなみに、命の母Aは女性ホルモンそのものを補充する薬ではなく、生薬やビタミン類などを配合し、更年期に伴う様々な症状の改善を目的とした市販薬です。

あれだけ大量にCMが流れていたことで、結果的には女性自身が「もしかしたら自分も更年期なのかもしれない」「薬を試してみよう」「病院で相談してみよう」と考えるきっかけにもなっていたのかもしれません。

一方、現在は「女性に更年期が訪れることを周囲も理解し、男女がお互いに理解しながら働きましょう」という方向に変わってきているように感じます。

近年、医療機関では症状や年齢、健康状態などに応じて、ホルモン補充療法(HRT)をはじめ、様々な治療法が選択できるようになっています。ここまで聞くと、「原因がホルモンなら、それを薬で調整すれば治るのではないか」と思ってしまいます。

ところが、実際はそれほど単純ではないようです。そもそも更年期に現れる症状が、人によってまったく違います。

よく知られているのは、顔のほてりや発汗ですが、それ以外にも動悸、めまい、頭痛、肩こり、疲労感、不眠など様々な身体症状があります。さらに、イライラ、不安感、気分の落ち込み、意欲の低下、集中力の低下など、精神面に現れることもあります。

しかも、同じ年代でもほとんど症状のない人もいれば、仕事や家事など日常生活に支障が出るほど強い症状に悩む人もいるそうです。

そして、ここが非常に重要だと思うのですが、その症状のすべてがホルモンだけで説明できるわけでもありません。年齢的な身体の変化、睡眠、仕事上のストレス、家庭環境、持病、服用している薬、精神的な負担など、様々な要因が重なっている可能性があります。

つまり、「更年期障害」という一つの言葉で呼んではいても、その中身は一人ひとりかなり違うわけです。

そして、もう一つ大きく変わったのが、更年期は女性だけの問題ではないと考えられるようになったことです。

かつて「更年期」といえば、ほぼ女性特有のものとして語られていました。しかし現在では、男性にも加齢に伴う男性ホルモンの低下などによって、疲労感、意欲低下、イライラ、不眠、集中力の低下など、様々な症状が現れることが知られています。いわゆる「男性更年期」です。

つまり50代になって、「あいつ最近怒りっぽくなったな」「昔みたいに仕事をしなくなったな」「なんだか性格が変わったな」と周囲から思われているオッサンだって、実は身体の変化が関係している可能性があるわけです。

もちろん、これも何でも男性更年期のせいにすればいいという話ではありません。単なる疲労かもしれません。仕事のストレスかもしれません。睡眠不足かもしれないし、別の病気が隠れているかもしれません。

結局のところ、女性であっても男性であっても、「この年代でこういう症状が出たから更年期障害」と簡単に決められるものではないのでしょう。ここに、更年期というものの難しさがあるように思います。

そして職場では、さらに難しい問題になります。本人が「最近どうも体調がおかしい」と感じていれば、医療機関へ行ったり、休養を取ったりすることができます。

ところが、本人自身はそれほど変化を意識していない一方で、周囲だけが「最近ちょっと以前と違うな」と感じる場合もあります。

以前より暑さを強く感じるようになった。汗をかくことが増えた。疲れやすくなった。離席することが増えた。集中力が続かない。以前よりイライラするようになった。

それを見た同僚が、「あなた、更年期じゃないですか?」などと言えるでしょうか。まして、年齢を重ねて社歴も長く、役職も上の人に対して、若いスタッフがそんなことを言えば、別の問題になってしまうでしょう。だから難しいのです。

医学的には、加齢に伴うホルモンの変化と様々な症状との関係が少しずつ分かってきました。それに対応する薬や治療法も増えてきました。

しかし現実には、症状もその背景も一人ひとり違います。ホルモンだけが原因とは限らず、仕事、家庭、睡眠、ストレス、加齢による別の変化などが複雑に絡み合っていることもあります。「更年期障害」という一つの言葉だけですべてをまとめられるほど、単純なものではないのですよ。

しかも、かつては女性特有の問題として扱われてきた更年期が、現在では男性にも起こり得るものとして広く認識されるようになりました。

そう考えると、これから必要なのは「更年期だから仕方ない」と諦めることでも、「更年期だからこの薬を飲めば大丈夫」と単純に考えることでもないように思います。

一人ひとり違う身体の変化と向き合い、必要であれば医療機関につなげていく。その方法を考えることの方が大切なのでしょう。

今は人生100年時代といわれ、70代になっても働いている人は珍しくありません。

だからこそ、「更年期について理解しましょう」だけではなく、本人が自分では気づいていない場合も含めて、「誰が・いつ・どのように本人に伝え、必要であれば医療につなげていくのか」。そこまで含めた仕組みや考え方について、そろそろ社会全体で整理してもらいたいと思っています。

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