機械式駐車場
2026年08月14日 06:41
東京都心のマンションを悩ませる問題の一つに、「駐車場問題」があります。これは今に始まったことではなく、私が分譲マンションの企画に携わっていた1990年代初頭の時点でも、駐車場をどれだけ確保するかは大きなテーマでした。当時のマンション用地には、バブル時代に高値で仕入れた土地も多く、限られた敷地の中で「住戸数に対して何割分の駐車場を用意するか」は悩みどころでした。
しかも、まだまだモータリゼーション真っ盛りの時代です。「家族を持ったらクルマを買う」という考え方も一般的で、全戸数の50%以上の駐車場を用意するマンションは珍しくなく、中には全戸分の駐車場を確保する物件さえありました。
そこで、狭い土地にできるだけ多くのクルマを収容するため、各地のマンションで導入されたのが機械式駐車場です。
ところが、それから30年以上が経過し、状況は大きく変わりました。
特に東京都心では、「家族を持ったら自家用車を保有するのが当たり前」という時代は終わり、自動車を持たない世帯が増えました。鉄道やバスが充実しているうえ、必要な時だけレンタカーやカーシェアを利用するという選択肢もあります。
「マンションなら全戸分の駐車場を確保する」なんて考え方が普通に存在していた時代が、ウソのようです。
そして、もう一つ大きな変化がありました。クルマの大型化です。各メーカーが世界市場を前提として車両を開発するようになった結果、かつてのように5ナンバー枠に収めることを優先したクルマは減りました。今では全幅1,800mmを超える車種など珍しくありません。
さらに、売れるクルマそのものも変わりました。主役はセダンからミニバンやSUVへと移り、軽自動車もセダンからハイトワゴン、そしてスーパーハイトワゴンへと変わりました。
ここで問題になるのが、昔からある機械式駐車場のサイズ制限です。もちろん設備によって異なりますが、従来型の機械式駐車場では、全長5,000mm、全幅1,850mm、全高1,550mm、重量2,000kg程度を上限としているものが少なくありません。
全長や全幅は大丈夫でも、最大の問題になるのが「高さ」です。全高1,550mmまでとなれば、ミニバンはもちろん、軽自動車のハイトワゴンでさえ入らない車種が出てきます。ましてや現在人気のN-BOXのようなスーパーハイトワゴンは完全に対象外です。
さらに、大型SUVや高級ミニバンになると、全幅や重量まで制限に引っかかります。ランドクルーザー、アルファード、ハイエース、N-BOX・・・。街を走っている人気車種を思い浮かべると、どれも入らないわけです。
そうなると、マンションの住民でクルマを所有していても、建物内の機械式駐車場を使わず、近隣の平置き駐車場を借りる人が出てきます。
ここからが管理組合にとって深刻な問題です。もともと機械式駐車場は、利用者から集める駐車場使用料によって日常の点検や修繕費をまかない、将来の大規模修繕や設備更新にも備えるという考え方で運営されてきたマンションが少なくありません。
ところが、利用者は減る。駐車場収入も減る。それでも機械は古くなる。利用台数が半分になったからといって、点検費用や設備更新費用まで半分になるわけではありません。むしろ築年数が進めば、部品交換や修繕の頻度は増え、いずれ大規模な設備更新の時期がやってきます。
つまり、「使う人は減っているのに、維持費はかかり続ける」という状況になるわけです。
さらに厄介なのは、機械式駐車場を利用していない住民にとってみれば、「なぜ自分たちが使っていない駐車場の修繕費を管理費や修繕積立金から負担しなければならないのか」という不満が生まれやすいことです。
かといって、機械式駐車場を撤去するのもタダではありません。設備を撤去して平面化するにも費用がかかりますし、地下ピット式であれば埋め戻しなどの工事も必要になります。建築確認や条例、既存不適格などの問題が絡むケースもあるでしょう。
また、現在は空きだらけだからといって全部撤去してしまえば、将来クルマを所有したい住民が現れた時に、駐車場が足りなくなる可能性もあります。
そこで最近のマンションでは、機械式駐車場をすべて維持するのではなく、一部を廃止したり、ハイルーフ車に対応できる設備へ更新したりするなど、実際の需要に合わせた再編が必要になってきます。
この問題は、現在のタワーマンションでも数十年後には顕在化してくることでしょう。それどころか、タワーマンションには地下や建物内部に大規模な機械式・タワー式駐車設備を設けている物件も多く、これらが設備更新の時期を迎えれば、かなり大きな費用が発生する可能性があります。
中古マンションを買う方も、新築マンションを買う方も、敷地内に駐車場がある場合、その車室サイズはどの程度なのか?その管理コストは誰がどう負担することになっているのか?そういったことまで考えないといけないのかもしれませんね。









