東武鉄道

2026年08月21日 04:03

スクリーンショット 2026-08-21 035853昨日、非常に痛ましい鉄道事故が発生しました。

8月20日午前10時45分頃、栃木県鹿沼市の東武日光線・新鹿沼駅で、線路内の除草作業に従事していた作業員4名が、浅草行きの特急「スペーシアX」と接触し、亡くなりました。

当時、現場では7名が除草作業をしており、列車の接近を確認するための列車見張員や中継見張員も配置されていたとのことです。

東武鉄道の会見によれば、作業現場から約315m離れた場所にも中継見張員を配置し、列車が接近した際には作業員を安全な場所へ退避させる手順が定められていました。それでも、4名もの方が一度に亡くなる事故が起きてしまったことになります。

報道では、列車見張員が所定の場所にいなかった可能性も指摘されていますが、現時点では事故原因は調査中です。誰が、どの段階で、どのような判断をしたのか。定められた手順がどこまで実行されていたのか。今後の警察や東武鉄道などの調査を待たなければなりません。

このニュースを見て、私が真っ先に思い出したのが、27年前にJR東日本で起きた事故です。

屋外広告業者のうち、私達のようなJR東日本管轄エリアを担当する会社は、毎年2回の安全講習を受ける必要があります。逆の書き方をすれば、その講習を受けていない人は、駅構内や線路内の広告作業ができません。なぜ、そこまで徹底した安全教育が行われているのか。

その背景にある大きな事故の一つが、1999年2月21日午前0時14分頃、山手貨物線の目黒・五反田間で発生した触車事故です。

夜間作業の現場へ向かう途中だった作業員5名が、後方から走ってきた臨時列車にはねられ、全員が亡くなりました。

工事指揮者が当日の列車ダイヤを十分に確認せず、列車が来ないと思い込んで作業員を線路内へ入れてしまったことなどが事故につながったとされています。

その後、JR東日本では「線閉なくして作業なし」という考え方が徹底されるようになりました。つまり、「列車が来たら見張員が知らせて逃げればいい」という人間の注意力に依存する安全対策ではなく、原則として線路を閉鎖し、列車が進入できない状態を作ってから作業するという考え方です。私達が受ける安全講習でも、こうした過去の事故について繰り返し教えられます。

それだけではありません。線路内への立ち入り、列車の接近、高所作業、脚立の使用方法、保護具の装着など、「そこまで細かく決める必要があるのか」と感じるほど様々なルールがあります。

鉄道の現場では一つの判断ミスが文字通り命にかかわります。だからこそ、安全に関するルールは「知っている」だけでは足りません。何度も何度も教育し、身体に染み込ませ、現場で当たり前に実行できるところまで徹底する必要があるのだと思います。

そして、もう一つ重要なのは、安全を個人の能力だけに頼らないことです。ベテランだから大丈夫。見張員がいるから大丈夫。列車の時刻は分かっているから大丈夫。いつもやっている作業だから大丈夫。こうした「大丈夫」の積み重ねの先に、重大事故が発生する可能性があります。

今回の新鹿沼駅の事故でも、見張員が配置され、安全確認の手順そのものは存在していたとされています。それなのに、なぜ4名もの方が列車と接触する事態になったのか。ここは徹底的に検証してほしいと思います。

そして、もし手順や教育、作業体制、指揮命令系統などに問題が見つかったのであれば、それを東武鉄道だけの問題として終わらせてほしくありません。

運輸安全委員会も、過去の触車事故について、作業工程の変更後に再打ち合わせをしなかったケースや、定められた確認手順が守られなかったケースなどを挙げ、触車事故防止のための注意喚起を行っています。

JR東日本が過去の重大事故を教訓として、安全講習や「線閉なくして作業なし」という考え方を長年にわたって徹底してきたように、今回の事故についても原因を徹底的に究明し、その教訓を鉄道業界全体で共有してほしいと思います。

鉄道会社の社員だけではありません。工事会社、警備会社、清掃会社、広告会社、造園会社など、線路や駅で仕事をするすべての人に対して、会社や雇用形態、経験年数に関係なく、同じレベルの安全教育が繰り返し行われる仕組みが必要なのではないでしょうか。

安全講習は、面倒な手続きではありません。安全ルールも、仕事をやりにくくするために存在するものではありません。その一つ一つの背景には、過去に起きた事故と、そこで失われた命があります。

今回亡くなられた4名の方々の事故も、単なる「痛ましい事故」として時間とともに忘れ去られることなく、二度と同じ事故を起こさないための教訓として残してほしいと思います。

そしてJR東日本で行われているような徹底した安全教育と、可能な限り人間の判断だけに依存しない安全対策が、東武鉄道はもちろん、全国すべての鉄道会社と、その現場で働く協力会社にまで普及していくことを願います。

サイドになりましたが、これまでの鉄道現場で安全対策が十分でなかったために命を落とされたすべての方々に、改めて心よりご冥福をお祈りいたします。

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