外食
2026年09月14日 06:35
飲食店の数字で重要な指標が「既存店売上」と「来店客数」の推移です。これは、経営状況の把握や未来を分析するうえで非常に有益なデータなのですが、その当事者である企業側が意外と鈍感だったりするケースが散見されます。例えば、「既存店売上は対前年98%、来店客数は96%と、ともに微減となりました」といった説明がIR資料に書かれていたり、決算説明会などで語られていたりすることがあります。
しかし、私は来店客数が前年比96%という数字を「微減」とは考えません。特に、年間を通して100%割れの月が複数回出てくるようなら、その後、業績に深刻な影響を与える可能性があると考えています。
例えば客単価2,000円未満のお店。牛丼チェーン、ハンバーガーチェーン、ファミリーレストラン、大手中華系チェーンなど、全国展開している多くの飲食チェーンはココに属すると思います。こうしたお店の売上を支えているのは、ランチやディナーで繰り返し利用するヘビーユーザーです。
では、物価が上がり、生活費全体が高くなった時、最初に抑えやすい出費は何でしょう。私は「外食」だと思っています。ランチなんて、コンビニでカップ麺とおにぎりを買えば済みますし、もっと安くしようと思えば、スーパーマーケットで弁当やパンを買うという選択肢もあります。
客数が減るというと、「お客さんそのものが減っている」と考えがちですが、現実にはヘビーユーザーの来店頻度が下がっているケースも多いでしょう。
週4回利用していた人が週3回にすると、利用回数は25%減。
週3回だった人が週2回にすると約33%減。
週2回だった人が週1回にすると50%減です。
「外食を少し控えよう」
消費者にとっては、その程度の行動変化なのですが、飲食店側から見ると、とんでもなく大きな変化になります。
しかも、全員が一斉に外食を減らすわけではありません。一部の人が少しずつ来店頻度を落としていく。その積み重ねが、企業側の数字には「既存店客数前年比98%」「96%」「94%」という形で現れてきます。
だから私は、既存店客数が対前年98%になった時に「たった2%の減少」とは考えません。むしろ「大変な売上低下の入口に立っている可能性がある」と考えます。
一方で、企業側は値上げによって客単価を上げることができます。仮に既存店客数が96%まで落ちても、客単価が102%になれば、既存店売上は約98%です。そこで、「既存店売上は前年を2%下回る程度にとどまりました」と説明してしまう。
しかし、私が見ているのはその裏側です。
その客単価は値上げで作られたのか?
キャンペーンで作られたのか?
それとも本当にお客さんが一品多く注文するようになった結果なのか?
特に怖いのは、値上げによって客単価を上げることで売上高を維持し、その数字を見て経営側が安心してしまうことです。
お客さんが値上がりを実感するのは、実際に店舗へ行って注文した時です。値上げ初月はそれまでと同じように来店していても、「高くなったな」と感じた人が、翌月から来店回数を減らす可能性があります。つまり、値上げの影響が客数に現れるまでには、タイムラグがあるわけです。
これから食品消費税率を1%にしようとしている国があります。
仮にこれが実施され、店内飲食との税率差が9%になれば、客単価2,000円未満の外食チェーンにとっては、かなり大きな環境変化になると思います。「今日は外食をやめよう」で済むとは到底思えません。
「同じ店で買うけれど、店内では食べずに持ち帰ろう」
「ランチはコンビニやスーパーで買って自席で食事しよう」
「夜は飲食店へ行くぐらいなら家で済まそう」
こうした選択が増える可能性があります。客単価2,000円未満のチェーン店にとっては、単なる値上げへの対応だけではなく、徹底したテイクアウトへのシフトが不可欠になるでしょう。
売上は値上げで作ることができます。しかし、客数はなかなか作れません。だから私は、飲食店を分析する時、「いくら売ったか」よりも先に「何人来たのか」を見るようにしています。
そして、この客数を大きく減らす可能性があるのが、食品消費税率1%の導入です。いったいどんな未来が待っているのか、その結果は導入されてみなければ分かりません。
ただ、もう一つ気になることがあります。
食品の税率が1%になっても、店内飲食が10%のままだとすれば、飲食店は仕入れ時に支払う消費税が大幅に減る一方、お客さんから預かる消費税は10%のままです。
現在は仕入れ時に支払った消費税を仕入税額控除として差し引くことができますが、その仕入れにかかる税率が1%になれば、当然ながら控除できる金額も小さくなります。
つまり、店内飲食を中心とする飲食店では、売上や利益が同じでも、実際に税務署へ納める消費税額が今より大幅に増える可能性があります。
今でも消費税の納税時期になると、必死の思いで100万円、200万円という現金を用意している中小零細の飲食店は少なくないでしょう。それが制度変更によって数百万円単位で増えるようなことになれば、資金繰りに与える影響は決して小さくありません。
特に中小零細の飲食店には、いわゆるドンブリ勘定で経営しているお店も少なからずあります。売上はある。利益も出ている。ところが、消費税を納める現金がない。そうなる可能性もあるわけです。
食品消費税率1%という言葉だけを聞けば、消費者にとっては大幅な減税に見えます。しかし、その裏側で外食産業に何が起きるのか。
客数が減り、さらに納税時の資金負担まで増える。場合によっては、消費税を納めることができず、廃業を選択する飲食店まで出てくるのではないか。そこまで考えてこの「食品消費税率1%」という話を見ています。
最後になりましたが、消費税を選挙の人気取りのために上げたり下げたりするのは良くないと思っているのですが、与党も野党も食品消費税カットが未来を切り開く秘策だと思っていることに驚き続けている私です。









