印旛沼

2026年09月24日 03:34

ChatGPT Image 2026年9月24日 02_53_22台風25号による記録的な大雨で、千葉県の北印旛沼の堤防が決壊したとの報道が出ています。

千葉県によると、成田市船形干拓にある北印旛沼の堤防が約100mにわたって決壊。さらに北印旛沼へ流れ込む農業排水路「角川」の堤防の一部も決壊し、北印旛沼や長門川周辺で大規模な浸水が発生しています。

千葉県の印旛沼の干拓事業は、学校で「江戸時代の田沼意次による計画」と習ったので、非常に古くに干拓された場所だと思っていたのですが、昭和30年代までの印旛沼は、現在よりはるかに大きなW字型の沼で、それを大規模に干拓して今の陸地部を作り出していたことを今回知りました。

つまり、今では普通に水田や道路が存在している場所でも、歴史を遡れば沼や湿地だったところが少なくありません。実際、水資源機構は印西市下井・成田市大竹付近について、現在水田になっている約230haが、戦後の干拓以前には印旛沼の底だったと紹介しています。

雨が止まれば自然に水が引いていく場所もあります。しかし印旛沼周辺には、もともと水面より低い土地や、自然排水だけでは水を抜きにくい土地があります。

だからこそ、この地域には巨大な排水設備が整備されていて、印旛機場には最大毎秒92m3、大和田機場には最大毎秒120m3という非常に大きな排水能力があったのだそうです。普段は、こうした堤防とポンプによって水位をコントロールし、その内側で人々が生活し、農業を続けていたわけです。

ところが今回は、その肝心の堤防が決壊してしまいました。治水のために水を封じ込めていた堤防が切れ、干拓地などの低地へ大量の水が流れ込んだのですから、簡単に水を抜けるような状況ではなさそうです。

では、こうした堤防の決壊を千葉県や地元自治体は想定していなかったのでしょうか。調べてみると、そうではありませんでした。千葉県は北印旛沼、西印旛沼などを含む印旛沼流域について、想定し得る最大規模の降雨による「洪水浸水想定区域図」を以前から公表しています。

成田市の防災ハザードマップにも、大雨によって河川が増水し、堤防が決壊した場合に想定される浸水範囲や浸水深が掲載されています。

一方で今回気になるのが、実際に堤防が決壊した際の情報伝達と避難情報です。

隣接する栄町では、22日午前6時47分に「印旛沼の越水」を理由として避難指示を発令し、午前7時14分には「印旛沼が決壊し浸水の危険性がある」として対象地区を追加しています。つまり、この時点では少なくとも周辺自治体が決壊を把握し、住民に避難を呼びかけていました。

ところが、実際に堤防が決壊した成田市側で、その情報がいつ、どのように把握され、住民への避難情報にどう反映されたのかについては、現時点では分からない部分があります。

報道でも「いつ決壊したのか」自体が現段階では明らかになっておらず、自治体が決壊情報をどのように把握したのかが検証されています。

実際、浸水した住民からは「水の避難のメールは何も入っていなかったので自己判断で避難した」という証言も報じられています。台風が通過した後に水が押し寄せた地域もあり、避難情報がどの段階で、どの地域に出されていたのかは、今後きちんと検証する必要がありそうです。

国土地理院の空撮をもとに作られた今回の浸水推定図を見ると、浸水域は北印旛沼の横に一つの巨大な水面となって広がっているわけではありません。北印旛沼から北側へ延びる大きな浸水域がある一方、西印旛沼周辺や佐倉市方面などにも浸水域が点在しています。

つまり今回起きているのは、単純に「印旛沼が巨大化した」というより、印旛沼周辺に張り巡らされた堤防、水路、排水施設によって水から守られていた低地に、大量の水が入り込んだと考えた方が実態に近そうです。

問題は、ここからどうやって元に戻すのかです。

浸水した地域から一生懸命水を排出しても、印旛沼と浸水地域が決壊部分でつながったままなら、条件によっては再び水が入ってきます。

そのため、印旛沼そのものの水位を下げながら、決壊した堤防を応急復旧して水の出入りを止め、浸水地域に残った水を排水する、という作業を進める必要があります。

千葉県も9月23日、国に緊急復旧の支援を要請し、国土交通省のTEC-FORCEが派遣されることになりました。県は国とともに「早期の堤防の機能回復」を図るとしています。

長い年月をかけて干拓し、堤防や排水設備によって維持されてきた地域だけに、単に雨が止み、水位が下がるのを待てばすべて元に戻るというものではありません。

決壊した堤防を塞ぎ、印旛沼と浸水地域を再び切り離し、低地に残った大量の水を排出する。その後には堤防や道路、農地などの本格的な復旧も待っています。

今後、印旛沼の水位をどこまで下げ、決壊した堤防をどのように塞ぎ、そして広範囲に残った水をいかにして排出して復旧していくのかについて注視するとともに、今回の堤防決壊がいつ発生し、その情報が県や自治体にいつ伝わり、なぜ住民への避難情報が十分に届かなかった地域があったのかについても、今後の検証に注目していきたいと思っている私です。

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