中国のEV元年がいつかは記憶が無いですが、間違いないのは北京オリンピックのあった2008年と上海万博のあった2010年の間に電動スクーターが激増しました。当時は自動車やバイクの無免許運転が当たり前でしたが、当局による取り締まりが始まり様々な規制が出来てきて高額なナンバープレート制度が導入される地域も出て来たのに対し、電動スクーターは免許が不要で登録もタダみたいな物だったので一気に広がったのです。
上海万博終了後に元日本館だった場所でアニソンイベントがあったのですが、その時点で上海市内の電動スクーターの販売台数は300万台を超え、上海市の人口2,300万人(2011年上海市人口統計)に対し7人に1人の割合となり、大人の5人に1人が持っているという状況でした。
当時から中国人民政府は「近い将来電気自動車の時代が来る時に備えての国家的投資だ」と表明していて、当時の電動スクーター生産台数は年間4千万台以上と言われていました。有象無象のメーカーも多数ありましたが、合計生産台数は少な目ではあるけどウソでは無いかと思われます。
2010年といえば日本では三菱アイミーブの一般販売が開始され年末には日産リーフがデビュー。電気自動車元年と言われていましたが、同時に電動アシスト自転車の国内出荷台数が約38万台と国内バイクメーカー4社の合計出荷台数に並んだとか言ってた頃です。
そんな時代に中国は毎年4千万台以上の電動スクーターを市場にぶち込んで壮大なる社会実験をしていたわけで、凄まじい技術の進化があったことと思います。そして2014年には中国人民政府から電気自動車(含むPHV/FCV)に対する方針が発表され、2016年には更新する政府車両や公共交通機関車両の30%以上をそれらにせよとの指示が出て、一挙にEVメーカーが多数誕生しました。
中国の補助金は企業に出るため、EVメーカーをやるといえば多額の補助金が出る時代にメーカー数が過多となり、一時は400社を超えているとも言われていましたが、今は100社を大きく割り込む展開。ここ数年で15社程度にまで減るとの話しもあります。
でも減ったとしても15社もあるんです。しかも各社がデザイン/IT/マーケティング等で一長一短だし、EV/PHEV/ガソリンと得意な発動機も各社で異なるので、今後は合併によって足りない部分を補完し合うことで一気に巨大化する企業が出て来る可能性もあります。
メディアには「中国EVの墓場」とか言って倒産したシェアEV会社の車両が多数放置されている写真を紹介したりしているのも見かけますが、中国経済の悪化で国内市場だけでは生きられなくなっているEVメーカーが多数出てきているのも事実だったりします。
「窮鼠猫を噛む」では無いですが、中国企業は困ったことがおきると本気を出すのが通例なので、国内経済の悪化で困った中国企業が、一気に海外市場に攻勢をかけた時、世界の自動車市場が激変するんじゃないかと思ったりもします。
ジャパンモビリティショー2025では、BYDが発売する軽EVを出品します。軽PHEVも開発中と言いますから、これらが補助金を使って150万円以内なら日産サクラ/三菱eKクロス EVなんて目じゃないわけで、かなりのインパクトがあるのでは無いでしょうか。
国を挙げて15年もかけて電気自動車市場を育てて来た中国に対し、企業の自助努力に任せて来た日本の今後はどうなりますかね。国会議員の皆様にはとっとと新政権を発足させてもらって、コメ対策や物価対策じゃない未来への意味ある投資を議論してもらいたいと思ってます。


