中毒

2026年06月12日 06:07

スクリーンショット 2026-06-12 0522002023年11月末、私どものイベントや映像制作スタッフの一人が亡くなりました。ここではスタッフKと書きます。まだ50歳前後という年齢の男性でした。

ある朝、自宅のトイレで消化器系から大量出血し、血圧が急激に低下。脳へ十分な血液が送られなくなり、そのまま帰らぬ人となりました。

私は医師ではありませんので、ここで病名を断定することはできません。しかし、今振り返ると「もっと早く異変に気付けなかったのだろうか」と思うことがあります。

Kは長年、腰痛に苦しんでいました。少なくとも2018年頃には腰痛ベルトを巻いて生活しており、現場でも腰をかばう姿をよく見かけました。イベント設営の仕事は体力勝負ですから、「職業病みたいなものだろう」と私も周囲も考えていました。

Kはお酒が大好きでした。私の自宅とも近く、近所の酒場で毎晩のように見かけました。実際に一緒に飲むことも多く、朝まで飲み続けたことも一度や二度ではありません。

ところが2020年、新型コロナウイルスの流行で世の中が大きく変わります。飲食店で酒を飲む機会は激減しましたが、その一方で自宅で飲む時間は増えました。イベントや映像制作の仕事も大きく減り、自宅にいる時間が長くなった人も少なくありません。

私自身も家飲みが増えました。Kもまた、そうだったのではないかと思います。

2022年3月、大規模展示会の設営現場でのことです。徹夜作業を伴う現場でしたが、Kは腰痛が激しく、設営開始から数時間で離脱しました。翌朝に再び現場へ来たものの、途中から動けなくなるほど苦しそうな状態となり、本番開始前に帰宅してしまいました。

当時は「腰が悪いから仕方ない」と思っていました。しかし今になって考えると、本当に腰だけの問題だったのでしょうか。

実はKとは別に、共通の知人で金属加工会社を経営するSがいます。現在65歳になるSも、Kとほぼ同じ時期から腰痛を訴えるようになり、同じように腰ベルトを巻いて生活していました。そしてSもまた、大の酒好きでした。

2019年、Sはこんなことを言っていました。「今年はガンマGTPが400に半減して医者に褒められた」

当時は冗談として聞いていました。しかし今思えば、笑い話ではなかったのだと思います。その話を聞いたKと私は、「Sと飲むのは少し考えた方がいいな」と話し、実際に私の方から飲みに誘うことはやめました。

ただ、その後もKとSは一緒に飲んでいたようです。私は年齢が近いこともありSからの誘いを断れましたが、Kは一回り以上年齢が離れていましたので、なかなか断れなかったのかもしれません。

そして今年3月末、そのSが倒れました。現在も入院中です。肝硬変から来る多臓器不全と聞いています。経営していた金属加工会社も閉業を余儀なくされました。

偶然なのかもしれません。しかしKもSも長年腰痛を抱えていました。そして二人とも酒好きでした。

腰痛の原因はさまざまです。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、本当に腰そのものに原因があるケースも多いでしょう。一方で、肝臓や膵臓などの内臓疾患が腰や背中の痛みとして現れることもあります。

今になって思うのです。あの腰痛は、本当に腰だけの問題だったのだろうかと。

私がこのブログでアルコール依存症や肝硬変について書くようになったのは2020年頃からです。きっかけは元TOKIOメンバー山口達也さんの一連の問題でした。

当時は正直、「そこまで深刻な話なのだろうか」と思っていました。しかしその後、身近な人たちを見ているうちに考え方が変わっていきました。コロナ禍で仕事が減り、自宅で過ごす時間が増え、お酒を飲む時間も増えました。私自身も例外ではありません。

2023年春には鎖骨を骨折し、手術のため約3カ月間禁酒しました。しかしKが亡くなった後の忘年会シーズンには再び飲酒機会が増え、2024年初頭まではかなりの回数の飲み会に参加していました。

そんな2024年の正月。Sと飲む約束をしていました。二人の自宅から徒歩10分圏内にある、正月は元日だけ営業する天ぷら屋を予約して待っていたのですが、時間になっても来ません。

LINEも電話もつながります。「すぐ行く」「タクシー呼んだ」そう言うのですが、一向に現れません。結局2時間以上待ちました。店は満席状態が続いていましたので、最後は居づらくなり店を出てSの自宅へ向かいました。

自宅には結構酔った様子のSがおり、左手にはビニール袋。その中には血が数センチ溜まっていました。話を聞くと「包丁で切った」とのことでしたが、見た瞬間に救急車レベルだと思いました。病院へ行くよう強く勧め、本人も納得して受診したようです。

その頃には地域コミュニティの中でも、「Kは酒が原因だったのではないか」「Sの酒を止めないとまずい」そんな会話が普通に交わされるようになっていました。

そして2024年秋。今度は私自身の健康診断結果に異変が現れます。献血結果で9月には総コレステロール299&血圧高め。10月はガンマGTP129も記録しました。さすがに危機感を覚え、再び禁酒期間を設けて体調を戻しました。

2025年になると、Sに対して「もう飲まない方がいい」と伝える機会が何度もありました。飲食店で見かけて帰宅を促したこともあります。それと同時に、このブログでアルコール依存症や肝硬変について書く機会も増えました。

以前「アルコール依存症」といわれた病気は「アルコール使用障害(AUD)」あるいは「アルコール使用症」に変わりました。「酒は適量」だった指導も「酒は1滴でも飲んだらダメ」に変わっています。

Kはもう戻ってきません。
Sはいま病院のベッドの上にいます。

だからこそ、この記事を読んでいる方にはお伝えしたいと思います。調子が悪ければ健康診断を受けてください。健康診断の数値が悪いなら診察を受けてください。周囲から飲み過ぎを指摘されているなら、一度アルコール使用症を疑ってみてください。

私はようやく飲む日と飲まない日を設定できるようになりました。居酒屋やバーへ行ってもウーロン茶で過ごすのが苦にならなくなりました。二日酔いが持病と公言していた私でも変われたので、誰でも頑張ればできると思います。

どうしてもお酒がやめられないと感じている人は、一度専門医に相談してみましょう。その一歩が、10年後の人生を大きく変えるかもしれません。

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