ヤマハ発動機

2026年08月28日 04:25

スクリーンショット 2026-08-28 041601なぜか日本メディアは、電気自動車(以下EV)の話になると「日本は出遅れた」といった論調で話を構成するのですが、日本はどちらかというと、EV先進国だと私は思っているのです。

というのも、私が40年前に卸売市場でアルバイトをしていた際に乗っていたターレ(ターレットトラック)という車両は当時からEVでしたし、同様に40年前からゴルフの際に使うカートも結構な確率でEVでした。

今も豊洲市場へ行けば、荷物を載せたターレが縦横無尽に走っています。小回りが利き、頻繁に発進と停止を繰り返し、重い荷物を運ぶ。しかも屋内や半屋内で使うため、排気ガスを出さず、騒音も少ない電動車との相性が非常に良い乗り物です。

同様にゴルフ場に行けば、電動カートも当たり前のように走り回っています。ヤマハ発動機は1975年からゴルフカートを製造しており、現在では累計生産100万台を超えています。つまり日本には、乗用EVが話題になる何十年も前から、電動の小型モビリティを作り、運用し、修理し続けてきたメーカーが存在するわけです。

あと、倉庫などでよく見かけるのが電動フォークリフト。三菱ロジスネクストにつながる日本輸送機(いわゆるニチユ)は、なんと1939年に日本初のバッテリーフォークリフトを開発しています。毎日長時間、重い荷物を持ち上げ、発進と停止を繰り返す世界で使われ続けているのです。

ましてやダイハツは、1969年には「フェロー バンEV」の販売を開始し、1970年には軽商用車「ハイゼット バンEV」の販売を開始。同年開催された大阪万博では、来場者用のエキスポタクシーをはじめ、警備用や迷子移送用など、さまざまなEVを会場内で走らせていました。ある意味、実用EVの老舗なのです。

しかも日本には、もう一つ大きな財産があります。それが鉄道です。

電車は、広い意味ではEVそのものです。電気を受け取り、インバーターで制御し、モーターを回して車輪を駆動する。しかも数百人、場合によっては千人以上を乗せ、毎日朝から晩まで加速と減速を繰り返します。何より鉄道では、「故障したので今日は動きません」では済みません。

モーター、インバーター、制御装置、回生ブレーキ、電力変換、熱管理などについて、日本には長年蓄積してきた膨大な技術があります。電源を外部から受け取るかバッテリーに頼るかの違いはありますが、逆に言えば、バッテリー以外の技術はしっかりあるとも言えます。

そんなわけで、私自身は「日本のEVにはかなり可能性がある」と思っています。その理由は、日本が得意としてきたEVが、巨大なバッテリーを積んで500km、600km走る単なる乗用車ではなく、「必要な距離を、必要な大きさで、毎日確実に走ることが求められる業務用電動車」だったからです。

ターレ、フォークリフト、ゴルフカート、軽商用車のすべては、毎日同じ場所を行き来する業務用電動車です。毎日決まった範囲を走り、使用が終われば決まった場所へ戻ってきます。一充電で500km走れる必要などありません。

そんな利用場面は、郵便、宅配、介護、営業、工場、農業、自治体、商店、建設現場・・・といった形で山のように存在するわけです。

狭い国土の日本だからこそ、こういう用途が大量にあり、小さく、軽く、安く、壊れず、狭い道をスイスイ走り、毎日確実に仕事をこなせる車両というニーズを生かせば、かなりの量産効果も見込め、それは世界でも競争力を発揮できるのではないかと思うのです。

中国やアメリカと同じ土俵で「巨大なバッテリーを搭載した高性能EV」を競うだけが、日本のEV産業の進む道ではないと思います。

日本には昔から「小さな電動車を、毎日確実に働かせる技術」が蓄積されてきたことに気付きます。世界中で物流のラストワンマイルが電動化され、工場や空港、ホテル、観光地、農場、巨大施設などでも小型モビリティの需要は増えていくでしょう。

高齢化が進めば、低速で安全に移動できる地域交通用モビリティの需要も増えるはずです。そう考えると、日本が狙うべきEVは「テスラやBYDと同じもの」だけではないのかもしれません。

むしろ日本がこれまで蓄積してきた技術を、「乗用車」という枠だけで考えずに組み合わせていけば、世界とは少し違った日本らしいEV産業が生まれる可能性があります。

「EVで日本は出遅れた」と結論付けるには、まだ早いのではないでしょうか。日本はEVを知らなかったのではありません。実はずっと昔から、目立たないところでEVを使い続けてきた国だけに、起死回生の一打でEV先進国へと一気に逆転できる可能性もあると思っている私です。

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