マリンスタジアム

2026年08月17日 07:46

a38月13日夜から14日明け方にかけて千葉県では記録的な大雨となり、死者も出る災害となったのは報道でご存じの方も多いと思います。

じつは、この被害があった翌14日から、幕張メッセとZOZOマリンスタジアムで「SUMMER SONIC 2026」が予定されていたのですが、帰宅困難者の一時滞在施設として幕張メッセが開放されていたにも関わらず、無事各コンサートは開催されました。

とはいえ、道路上には各所に冠水によって動けなくなった放置車両が点在する中での開催でしたので、結構な混乱状況を目撃した参加者の方も多かったと思います。

テレビでは最も被害の大きな場所が映し出されるため、「街全体が水没している」ように感じますが、実際の冠水は道路の高低差や排水能力によって極めて局地的に発生します。わずか数十m、場合によっては数mの高低差で状況がまったく違うこともあります。だからこそ怖いとも言えます。

先日大雨のニュースを見ていると、冠水した道路を「このくらいなら大丈夫だろう」と、そのまま走っていく車を見かけることがあります。

しかし、現在の乗用車の車体下側がどうなっているのかを見ると、冠水路へ入ることがどれほど危険なのかがよく分かります。

写真はアウディA3スポーツバックを下から見たものです。

最近の乗用車は、燃費性能や高速安定性を向上させるため、車体下部にも空力対策が施されています。写真を見ると分かるように、広い範囲にアンダーパネルやアンダーカバーを装着し、できるだけフラットな形状にして、車体下を流れる空気をスムーズに後方へ流しています。

ちなみにアウディA3は、フォルクスワーゲン・ゴルフと基本的な車体設計を共有する兄弟車です。つまり、これは特殊な高級車だけの話ではなく、現在の一般的な乗用車にも通じる構造です。

ところが、空気を相手にしている時には優れたこの構造も、冠水路では話が変わってきます。

アウディA3の最低地上高は標準モデルで140mm。つまり、地面からわずか14cmしかありません。もちろん、水深が14cmを超えた瞬間に車が浮くわけではありません。しかし20cmも水があれば、すでに車体下部は水につかります。さらに水深が増して床面付近まで来れば、車体には浮力も働き始めます。

しかも、車が冠水路を走れば、フロントバンパーで大量の水を押しのけます。押された水は左右だけでなく車体下側へも勢いよく流れ込み、速度が上がれば水圧も大きくなります。

ここで問題になるのがアンダーパネルです。アンダーパネルは空気をスムーズに流すための部品で、大量の水を受け止めるためのものではありません。前端や隙間から内部へ水が入り込むと、その水圧によってパネルが押し下げられ、固定しているクリップやボルト部分が破損することがあります。場合によってはパネルがめくれたり、外れたりして、そのまま流失してしまうこともあります。

実際、JAFが行った冠水路走行テストでも、水深30cmを30km/hで走行したEVでは、車体下部のアンダーカバーが外れる現象が確認されています。

さらにパネルの内部には、泥や砂、小石、落ち葉、ゴミなどを含んだ水が大量に入り込みます。それらが駆動系や配線、コネクターなどへ押し寄せ、フロント側から巻き上げられた水はエンジンルーム内へ入ることもあります。

怖いのは、「走り切れたから大丈夫」と思ってしまうことです。冠水路を抜けた後も普通に走れていたとしても、見えない床下ではアンダーパネルが破損していたり、泥や砂が入り込んでいたり、電装部品などが水をかぶっている可能性があります。

さらに水深が深くなれば、車体に働く浮力も大きくなります。完全に浮かなくても、タイヤを路面へ押し付ける力が弱くなればグリップ力は低下し、水流によって車体が流される危険性も出てきます。ガソリン車やディーゼル車なら、吸気口から水を吸い込んでエンジンを壊してしまう可能性もあります。

そもそも運転席から冠水路の水深を正確に判断することはできません。手前が10cmでも、その先が30cm、50cmになっているかもしれませんし、水面の下に道路の陥没や開いたマンホールが隠れている可能性もあります。

「前の車が通れたから自分も大丈夫」という判断も危険です。車によって最低地上高も吸気口の位置も、床下の構造も違います。

私たちは普段、雨の中を普通に車で走っているため、車は水に強いような感覚を持ってしまいがちです。しかし、「雨の中を走れる」ことと「水の中を走れる」ことはまったく違います。乗用車というのは、私たちが思っている以上に冠水路に弱い乗り物なのです。

「SUMMER SONIC 2026」参加のために千葉県を訪問していて、どこが冠水する場所か分からないまま車が水没してしまった方もかなりの数いらっしゃるのではないでしょうか。

今回の豪雨で亡くなられた方々に、心よりお悔やみ申し上げます。また、浸水や車両の水没などの被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

冠水は、ほんのわずかな道路の高低差によって突然現れます。「このくらいなら大丈夫」と無理に進むのではなく、少しでも危険を感じたら引き返す。今回の災害を教訓として、改めてそのことを心に留めておきたいと思います。

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