ゼネコン
2026年08月22日 05:20
大阪・関西万博のシンボルとなった「大屋根リング」。その工事などを担当した大手ゼネコンの現場責任者が、背任の疑いで逮捕されたというニュースがありました。もちろん、現時点ではあくまで容疑の段階であり、警察も本人の認否を明らかにしていません。報道によれば、自宅や親族が経営するカフェなどのリフォームを万博工事の下請け業者に発注し、その費用を万博工事に関連する請求として竹中工務店に支払わせた疑いが持たれているとのこと。損害額は約1369万円とされています。
正直「そんな額で逮捕するか!?」とも思いましたし、逮捕された当事者も「この程度は業界の慣例でしょ」と思ってるかもしれません。その辺はこのブログとは関係ない話しなのでこの程度で締めます。
このニュースを見て私が考えたのは、今回の事件そのものとは別に、「巨大な建設現場では、現場責任者がお金や発注に関して相当大きな権限を持つことがある」という建設業界特有の構造です。
建設現場には元請けのゼネコンがいて、その下に一次下請け、二次下請け、さらにその下の会社や一人親方など、非常に多くの事業者が入ります。しかも毎日数百人、巨大現場ならそれ以上の人が出入りします。当然、安全管理にも相当なお金がかかります。
実際、建設業界には「安全協力会費」「安全衛生協力費」「職長会費」などと呼ばれる費用があります。「請負金額の1%を安全協力会費としていただきます」といった仕組みを採用している会社や現場もあります。
もちろん、これは決して怪しいお金ではありません。安全大会や安全教育、現場の安全パトロールや点検、保護具や安全用品、ポスター、チラシ、横断幕、バッジ、腕章など、安全な現場を維持するためにはさまざまな費用が必要です。万が一の事故に備え、労災上乗せ保険などに加入している会社もあります。
国土交通省も、建設工事における安全衛生経費は労働災害防止対策を適切に実施するうえで必要な経費であり、下請負人まで適切に支払われることが必要だとしています。
一方、私自身がこれまで仕事で建設現場に入ってきた経験では、現場によっては入場者や協力会社から、1人1日500円程度の一定額を安全管理講習費などの名目で徴収する仕組みを目にしたこともあります。
ザックリ書けば、「第8工区、大野班30名揃いました」といって、安全衛生手帳と1万5000円を提出すると、手帳に確認印を押してもらって工区に入る、という感じです。
もちろん、自分の工区にいるスタッフについては、一人親方の労災加入確認、装備確認、体調確認、当日の作業内容や危険箇所の共有、KY活動などを職長である私が行います。
建設現場の朝は、点呼、体調確認、全体朝礼、当日の工程や危険箇所の共有、安全指示、準備運動、班別KY、作業前点検、職長による最終確認などを経て、ようやく作業開始となります。それだけ安全管理は重要であり、そこに費用がかかること自体には何の違和感もありません。
ただ、仮に1人1日500円だったとしても、300人が働けば1日15万円。月20日なら300万円になります。1年間続く現場なら単純計算で3600万円です。もちろん、そのお金が正式に会計処理され、安全管理や現場運営のために適切に使われているのであれば何の問題もありません。
私が気になるのは、「誰が徴収し、誰が管理し、何に使われ、最終的に誰がチェックしているのか」という部分です。
建設現場というのは、ある意味では期間限定で存在する一つの巨大企業のようなものです。元請けがいて、何十社という協力会社がいて、そこからさらに何段階もの下請け会社が入り、毎日大量の人とモノとお金が動きます。
大手ゼネコンの現場で仕事をする側からすれば、代金回収についての安心感もありますし、細かなルールを守り、一定の経費負担を受け入れてでも参加する価値のある仕事だという見方もあるでしょう。
だからこそ私は、安全協力会費や安全衛生協力費などについても、「昔からこうしている」「建設業界では普通だから」で終わらせるのではなく、より透明性を高めてもよいのではないかと思います。
実際、国土交通省も安全衛生経費について「見える化」を進めており、元請けと下請けの間で安全対策の実施分担や費用負担を確認する「安全衛生対策項目の確認表」や、安全衛生経費を内訳として明示する「標準見積書」の普及を進めています。
ならば、徴収するときだけではなく、「集めたお金を何に使ったのか」についても、現場単位あるいは安全協力会単位で、協力会社に分かる仕組みがあってもいいように思います。
今回報じられた事件と、安全協力会費などの現場経費に直接の関係があるという話ではありません。しかし今回の事件をきっかけに、大手ゼネコン各社には工事代金や下請けへの発注だけでなく、現場単位で動くさまざまなお金についても、改めて管理体制をチェックしてもらいたいと思います。
建設現場で本当に守らなければならないのは、作業員の安全だけではありません。誰が集め、誰が使い、誰がチェックするのかというお金の流れの「安全管理」も、同じくらい重要なのではないかと思っている私です。









