ジャングリア
2026年10月05日 11:39
先日、ジャングリアについて、プロデュースした「刀」という会社や代表の森岡毅さんについて、勝手なことをブログに書いたところ、各方面からいろいろなご意見をいただきました。私は当初、「700億円もの大金を、あっという間に溶かしてしまった」というような見方をしていました。ところが、皆さんからいただいたご意見を聞くと、「沖縄県北部に本格的なテーマパークを新設するのに700億円ってムリゲーじゃね?」との意見が大半でした。
森岡さんはUSJ時代から沖縄へのテーマパーク進出に取り組んでいた方です。2015年にはUSJの執行役員として沖縄県知事にテーマパーク進出を正式に打診し、海洋博公園周辺を候補地とする計画を進めていました。
その計画はUSJの経営母体が変わったことなどから2016年に中止されますが、森岡さんはUSJを退社して刀を設立した後、再び沖縄でのテーマパーク実現に動き出します。つまり、テーマパークを一から造るのにどれだけの資金が必要なのか、森岡さん自身が知らなかったとは到底考えられません。
沖縄県北部に本格的なリゾート型テーマパークを造るのであれば、大型リゾートホテル、ウォーターパーク、スパ、ショッピングゾーン、レストラン、夜間エンターテインメントなども設置したかったのでは?などと、勝手に想像してしまいます。
沖縄の北部まで来てもらう以上、「テーマパークへ行って帰る」のではなく、「ここに2泊、3泊したい」と思わせる施設にする必要があるからです。
そして、もう一つ必要なのが交通インフラです。東京ディズニーリゾートにはJR舞浜駅があり、USJにはJRユニバーサルシティ駅があります。
これほどの集客施設を沖縄北部に造るのであれば、本来ならテーマパークそのものへの投資とは別に、周辺道路や公共交通などへ、自治体や交通事業者による相当規模の投資も必要だったのではないでしょうか。
2015年に開業したイオンモール沖縄ライカムは、敷地面積約17万5000�屐�延床面積約16万�屐�駐車場約4,000台という巨大ショッピングモールです。この施設を建設する際、イオンモールは建設資金として沖縄振興開発金融公庫から200億円を借り入れています。
もちろん、この200億円がイオンモール沖縄ライカムの総建設費という意味ではありません。イオンモール自身の資金も投入されていますから、実際の総事業費はさらに大きかったはずです。
それに対して、ジャングリアは敷地だけで約60万�屐�しかも、建物を用意してテナントに貸し出すショッピングモールとは違い、アトラクションや特殊設備、造園、演出設備、飲食施設、バックヤード、メンテナンス施設などを自ら整備する必要があります。
さらに現在は、沖縄ライカムが建設された10年以上前より、建設費、人件費、資材価格が大幅に上昇しています。それなのに総事業費700億円・・・。
こうして考えてみると、私が最初に抱いた「700億円も使って、なんでこれしか造れなかったの?」とか、「なんで700億円が1年で消えるの?」という疑問そのものが、間違っていたことに気づきました。
むしろ、「たった700億円で、よくここまでたどり着いたな!」という見方の方が正しいのかもしれません。
テーマパークというのは、完成した瞬間がゴールではありません。新しいアトラクションを投入し、ホテルを造り、商業施設を増やし、夜のコンテンツを充実させる。来場者の反応を見ながら追加投資を繰り返し、何年、何十年とかけて完成度を高めていくものです。
東京ディズニーリゾートもUSJも、開業時の姿のまま現在まで営業しているわけではありません。
そう考えると、ジャングリアについて本当に重要なのは、「700億円を使った現時点」だけを見て評価することではなく、この先さらに何百億円、場合によっては何千億円という追加投資を呼び込み、それを続けることができるのか。
そして、この場所を沖縄北部までわざわざ足を運び、さらに「ここに泊まりたい」と思わせるようなテーマパークへと進化&深化させられるのか。ジャングリアの本当の評価が決まるのは、むしろこれからなのかもしれませんね。
ちなみに、とある方は、「ポテンシャルは十分あるんだから、最低限PICグアム(リンク)レベルのリゾート要素は揃えないとダメじゃね?」と申しておられました。勉強になります。
2026年09月27日 05:57
「株式会社刀」という会社があります。「マーケティングの神様」と呼ばれる(らしい)森岡毅さんが率いる会社で、USJの再建に携わったことで有名になったそうです。その後、丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスの既存店客数16ヵ月連続前年割れからのV字回復を手掛けた、という実績も発表されています。
私が刀の存在を知ったのは2023年。地域の日帰りバス旅行の候補として「西武園ゆうえんち」が挙がり、現地へ実施踏査(ロケハン)に行った時でした。
昭和の街並みを再現したリニューアルを手掛けたのが刀でしたが、現地で案内してくださった方によると、刀による集客効果は限定的で、当時は「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 ザ・リアル」の人気が圧倒的とのことでした。
そんなわけで私にとって刀の第一印象は、西武園ゆうえんちのリニューアルを手掛けたコンサル会社でした。
調べてみると、創業者の森岡さんはP&G出身で、USJ再建などで手腕を発揮したとされ、自伝的な著作も多数出版。メディアを使って自分自身を売り込むのが上手い方だという印象を持ちました。
その後、旧ヴィーナスフォートを利用した「イマーシブ・フォート東京」を自社で手掛け、沖縄では「ジャングリア沖縄」をプロデュースするなど、名前を聞く機会が増えました。
私はイベントプランナーを仕事にしていますが、施設や地域のプロデュースにも関わっています。そのためジャングリアには開業前から興味を持っていました。ただ、まだ行けていません。ちなみにイマーシブ・フォート東京も興味があったのですが、行く前に無くなってしまいました。
私は、こうした施設を行きもしないで評価するのは好きではありません。アクセス、スタッフオペレーション、飲食、物販、客の反応、リピーター、地域への波及効果など、現場を見なければ分からないことがたくさんあります。
ただ、ジャングリアについて調べていて驚いたのが「お金」です。
刀という会社は、とにかく巨額のお金を集める力があります。
・2020年 大和証券グループが刀へ140億円出資
・刀はジャパンエンターテイメントへ30億円出資
・ジャングリアは総事業費約700億円の巨大プロジェクトへ
・金融機関から366億円の協調融資を調達
700億円。私のような小さな会社を経営している人間には想像もできない金額です。これだけのお金を集められること自体、ものすごい能力だと思います。
ジャングリアは2025年7月に開業。当初の年間来場者計画約150万人に対し、初年度は約100万人。意外と悪くないようにも見えますが、テーマパークにとって重要な初年度としては厳しいスタートだったことは分かります。
開業直前の2025年6月期、運営会社ジャパンエンターテイメントは約51億円の最終赤字で、利益剰余金はマイナス約86億円。一方で総資産は約627億円あり、巨額の資金は施設や設備などに姿を変えていたことになります。
そして開業後の2026年6月期は約89億円の最終赤字。親会社ジャパンエンターテイメントホールディングスも、子会社株式の評価損などから約173億円の最終赤字になったと報じられました。
初年度ですから広告宣伝費などが膨らむこと自体は理解できます。しかし今年4月には20億円の追加融資を受け、さらに沖縄振興開発金融公庫が30億円を融資する方向だと報じられています。
しかも後者は新しいアトラクションへの成長投資ではなく、新たなスポンサーへ事業をつなぐまでの「つなぎ融資」とされています。
約700億円規模でスタートした巨大プロジェクトが、開業から1年あまりでさらに50億円規模の追加融資を必要としている。一体、お金はどこへ行ったのでしょうか。
もちろん、お金が本当に「消えた」わけではありません。建設費、設備、アトラクション、人件費、広告宣伝費、金利、企画、マーケティング、コンサルティング・・・さまざまなところに使われています。問題は、その全体像が外から非常に見えにくいことです。
新たなスポンサーや追加資金を巡る話の中では、ジャパンエンターテイメントから刀へ支払われたコンサルティング料なども含め、これまでの資金の流れを明らかにする必要があるとも報じられています。
もちろん、刀に不正があったという話ではありません。正当な仕事をして、契約に基づいて報酬を受け取ることには何の問題もありません。私自身もプロデュースを仕事にしていますから、それはよく分かります。
ただ、これだけ巨額の追加資金が必要になった以上、これから資金を入れるスポンサー候補が「これまでのお金が何に使われたのか明らかにしてほしい」と考えるのは当然でしょう。
沖縄には今まで200回(そんな少なくないとは思いますが)は行っていますが、とにかくあの場所に無いのは巨大プールのある施設。鈴鹿サーキットのプールみたいなのがあれば、美ら海水族館とプールに行くって方はかなりいると思うんですよねー。
そんなわけで、マーケティングの神様である森岡さんは、次の一手が大規模プールで、その次は星野リゾートのホテルじゃないかなーと思ってます。
そして、ここまで長々と書いてきましたが、一番大切なことがあります。
私はまだジャングリアへ行っていません。数字は単なるネット検索によるものです。ですから、まず現地へ行き、自分のお金を払って入場し、自分の目で見て来て評価を書きたいと思っています。
ただ、少なくとも私はマーケティング&プロモーションの世界で30年以上活動していますが、「成功は広告主の手柄、失敗はコンサルの失敗」は当たり前ですし、「手掛けた仕事は10年以上経過するまで一切明かさない」を原則にしています。
「私はスゴイので仕事ください」という方は結構おられるのですが、そういう姿勢はあまり好きになれません。私も高名なプロデューサーを起用する仕事はありますが、表面上はその方の企画になっていても、実際に企画を考えているのは私、ということも当たり前にあります。
安易に「実績がある」というだけで会社に発注するのではなく、最初は相手を疑いながら恐る恐る対話を重ね、少しずつ信頼を築いていく。その中で見つけるのが、本当のビジネスパートナーであり、それが結果的にベストコンサルになるのではないかと思っている私です。









