2026年09月19日 01:24
町会費集金はキャッシュレスの時代へ ー 進むDX化
町会や自治会という組織では、今でも驚くほど「現金」が使われています。町会費、自治会費、祭礼の会費、懇親会費、イベント参加費など、その多くが現金です。そして、それを班長や組長などの役員が一軒一軒訪問して集めている地域も少なくありません。
私自身、町会や地域活動に関わっていますので、この大変さはよく分かります。一度訪問して留守なら、また行かなければならない。受け取ったら領収書を渡し、誰からいくら受け取ったのかを記録し、集計して、最終的には銀行へ入金する。金額そのものはそれほど大きくなくても、ものすごく手間のかかる仕事です。
しかも今後、町会・自治会の役員を引き受けてくれる人が減り、高齢化も進んでいくことを考えれば、この仕組みをいつまでも続けられるのかという問題もあります。
その一方、払う側も「家に訪問されるのイヤ」「キャッシュレス化して欲しい」と思っている方も多く、掲示板や回覧板も「あり得ない」「ネット掲示板がいい」と、今では当たり前となっているDX化を求める声が高まっているのも事実です。
実際、町会費や祭礼会費の徴収をキャッシュレス化した事例は山のようにあります。そんなわけで、各地方議員の方々や、町会関係者の方々が分かりやすいように、ここにまとめてみました。
例1)横浜市保土ケ谷区岩井町原第一町内会(記事リンク)
約400世帯の町会費徴収にPayPayを導入しています。興味深いのは、最初から全面的に切り替えたわけではないことです。まず一つの班で試験的に導入し、さらに盆踊りでもPayPayを利用。その後、全班へ拡大しました。
そして重要なのは、現金を廃止していないことです。「現金」「銀行振込」「PayPay」という複数の支払方法を用意し、住民が好きな方法を選べるようにしています。
例2)千葉県柏市北柏町会
柏市の会議記録によると、導入当初は5%程度だったキャッシュレス利用率が、その後毎年増加し、2割を超えるまでになったと報告されています。
ここで面白いのが運用方法です。キャッシュレスですでに支払いを済ませた世帯を班長へ知らせ、その家には集金に行かなくてよい仕組みにしています。
例えば100世帯を担当していて、そのうち30世帯がキャッシュレスで払ってくれれば、訪問するのは70世帯で済みます。翌年40世帯、50世帯と増えていけば、集金作業はどんどん楽になります。つまり町会費のキャッシュレス化は、「住民の利便性向上」だけではありません。むしろ最大のメリットは、町会役員の仕事を減らすことなのかもしれません。
例3)広島市こころ石内北自治会
約1,200世帯というかなり大きな自治会ですが、クレジットカードによる自治会費徴収を導入しています。
事前アンケートでは83%がクレジットカード払いを希望。実際に導入すると934世帯、約78%がカード払いを選択したとされています。結果として、役員が訪問して集金する件数を約80%削減できました。
「自治会は高齢者が多いからキャッシュレスなんて無理」そんなイメージを持つ人も多いと思いますが、実際には8割近くがキャッシュレスを選択する自治会まで出てきているわけです。
例4)町田市小川自治会
会費のキャッシュレス化にあわせて、登録方法が分からない人などを対象に「登録相談会」を開催しています。
つまり、「分からない人がいるから導入しない」ではなく、「分からない人には地域で教える」という発想です。
参考1)PayPayは自治会・町内会なら決済手数料0円(リンク)
PayPayには、自治会・町内会向けの専用サービスがあります。条件を満たした自治会・町内会なら、
初期導入費 0円/月額利用料 0円/決済システム利用料 0円 なのです。
通常のお店がPayPayを導入する場合とは違い、自治会・町内会については特別な条件が設定されています。
しかも町会費だけではなく、自治会・町内会自身が開催する祭りなどでの商品・サービスの支払いにも利用できます。
一方で注意点もあります。PayPayでは寄付の決済には利用できません。
ですから祭礼で考える場合は、「祭礼会費=奉納金=寄付金」なので、これらの集金はできないということです。
参考2)東京都は町会費のキャッシュレス化を助成(リンク)
実は行政もすでに動き始めています。東京都は町会・自治会のデジタル化を支援しており、2026年度の「町会・自治会デジタル化推進助成」では、QRコード決済やオンライン・クレジットカード決済による町会費徴収も対象になっています。対象となる取組については、最長12か月、助成率10分の10という制度です。
つまり自治会費のキャッシュレス化は、すでに「できるかどうかを議論する段階」ではなく、「どうやって地域に普及させるか」という段階に入りつつあります。
ここで一番大切なのは、キャッシュレス化=現金廃止ではないということです。現金で払いたい人は現金。銀行振込がいい人は振込。PayPayがいい人はPayPay。クレジットカードがいい人はカード。選択肢を増やせばいいだけです。
例えば500世帯の町会で200世帯がキャッシュレスになれば、それだけで200軒分の集金作業がなくなります。現金を触る量も減ります。集計作業も減ります。役員宅で現金を保管するリスクも減ります。銀行へ現金を持っていく作業も減ります。そして何より、班長や組長が何度も各家庭を訪問する必要がなくなります。
町会・自治会の最大の問題の一つは、役員のなり手不足です。「町会活動そのものが嫌だ」という人ばかりではないと思います。
・仕事をしながら町会費を集めて回る
・回覧板を配る
・書類を作る
・現金を数える
・銀行へ行く
こうした細かな仕事が大量に残っていることが、役員を引き受けたくない理由の一つになっているのではないでしょうか。
そう考えると、町会費のキャッシュレス化は単なる支払方法の話ではありません。「住民がスマートフォンで簡単に払えるようにしましょう」というだけのDXでもありません。むしろ「班長・組長を現金集金から解放する」ためのDXです。
だから私は、各町会がそれぞれ勉強して、それぞれ決済事業者を探し、それぞれ契約するという形にする必要はないと思っています。
行政が少し手助けすればいい。例えば、
・利用できる決済サービスの比較表を作る
・導入方法をマニュアル化する
・町会規約や会計処理のひな型を作る
・高齢者向けの登録相談会を開催する
・必要なら初年度のシステム費を助成する
・町会役員向けの説明会を開催する
これだけでも導入する町会はかなり増えるのではないでしょうか。
そして、最初から100%キャッシュレスを目指す必要もありません。最初の年は10%でもいい。翌年20%。その次は30%。柏市の事例のように、利用する住民が毎年少しずつ増えていけばいいのです。
日本全国には非常に多くの自治会・町内会があります。そこで今なお膨大な時間を使って、「現金を集める」という作業が行われています。一つ一つは小さな作業ですが、全国で考えれば相当な時間です。しかも、その仕事を担っているのは地域のボランティアや高齢の役員だったりします。
キャッシュレス化というと、どうしても「スマートフォンを使える人のための便利なサービス」という話になりがちです。でも町会費については、少し違うと思います。払う人を便利にするだけではなく、集める人を楽にする。こちらの効果のほうが、実は大きいのではないでしょうか。
町会・自治会の担い手不足が問題になっている今だからこそ、こういう小さなところから地域活動の負担を減らしていく。これは一度、行政として本格的に検討してみても良いテーマだと思います。
最後に回顧録)
キャッシュレスの地域普及という話になると、私が思い出すのが沖縄です。
沖縄ではかなり早い時期から電子マネーEdyが普及しました。2005年にはリウボウ、リウボウストア、沖縄ファミリーマートなどで大規模にEdyが導入され、その後スーパー、コンビニ、飲食店、ガソリンスタンド、観光施設などへ急速に利用場所が広がりました。2006年には県内約1,000店舗、2007年には約2,600店舗まで拡大しています。
沖縄はアメリカ統治時代が長かったこともあり、クレジットカードなどへの心理的な抵抗が比較的小さかったのではないか、と個人的には感じています。
ただし、これについてはEdy普及との直接的な因果関係を示す資料を確認できたわけではありません。それよりも確実に言えるのは、「使える場所が増えると、使う人も増える」ということです。
スーパーで使う。コンビニで使う。飲食店で使う。ガソリンスタンドで使う。そうすると特別な「キャッシュレス」というものではなくなり、単なる日常の支払手段になります。
これは町会でも同じではないでしょうか。最初は町会費だけ。次に盆踊り。夏祭りの焼きそばや飲み物。地域イベントの参加費。そうやって地域の中で使う機会を増やしていけば、「PayPayなら使ったことがある」という高齢者も自然に増えていくと思います。
私自身、町会や地域活動に関わっていますので、この大変さはよく分かります。一度訪問して留守なら、また行かなければならない。受け取ったら領収書を渡し、誰からいくら受け取ったのかを記録し、集計して、最終的には銀行へ入金する。金額そのものはそれほど大きくなくても、ものすごく手間のかかる仕事です。
しかも今後、町会・自治会の役員を引き受けてくれる人が減り、高齢化も進んでいくことを考えれば、この仕組みをいつまでも続けられるのかという問題もあります。
その一方、払う側も「家に訪問されるのイヤ」「キャッシュレス化して欲しい」と思っている方も多く、掲示板や回覧板も「あり得ない」「ネット掲示板がいい」と、今では当たり前となっているDX化を求める声が高まっているのも事実です。
実際、町会費や祭礼会費の徴収をキャッシュレス化した事例は山のようにあります。そんなわけで、各地方議員の方々や、町会関係者の方々が分かりやすいように、ここにまとめてみました。
例1)横浜市保土ケ谷区岩井町原第一町内会(記事リンク)
約400世帯の町会費徴収にPayPayを導入しています。興味深いのは、最初から全面的に切り替えたわけではないことです。まず一つの班で試験的に導入し、さらに盆踊りでもPayPayを利用。その後、全班へ拡大しました。
そして重要なのは、現金を廃止していないことです。「現金」「銀行振込」「PayPay」という複数の支払方法を用意し、住民が好きな方法を選べるようにしています。
例2)千葉県柏市北柏町会
柏市の会議記録によると、導入当初は5%程度だったキャッシュレス利用率が、その後毎年増加し、2割を超えるまでになったと報告されています。
ここで面白いのが運用方法です。キャッシュレスですでに支払いを済ませた世帯を班長へ知らせ、その家には集金に行かなくてよい仕組みにしています。
例えば100世帯を担当していて、そのうち30世帯がキャッシュレスで払ってくれれば、訪問するのは70世帯で済みます。翌年40世帯、50世帯と増えていけば、集金作業はどんどん楽になります。つまり町会費のキャッシュレス化は、「住民の利便性向上」だけではありません。むしろ最大のメリットは、町会役員の仕事を減らすことなのかもしれません。
例3)広島市こころ石内北自治会
約1,200世帯というかなり大きな自治会ですが、クレジットカードによる自治会費徴収を導入しています。
事前アンケートでは83%がクレジットカード払いを希望。実際に導入すると934世帯、約78%がカード払いを選択したとされています。結果として、役員が訪問して集金する件数を約80%削減できました。
「自治会は高齢者が多いからキャッシュレスなんて無理」そんなイメージを持つ人も多いと思いますが、実際には8割近くがキャッシュレスを選択する自治会まで出てきているわけです。
例4)町田市小川自治会
会費のキャッシュレス化にあわせて、登録方法が分からない人などを対象に「登録相談会」を開催しています。
つまり、「分からない人がいるから導入しない」ではなく、「分からない人には地域で教える」という発想です。
参考1)PayPayは自治会・町内会なら決済手数料0円(リンク)
PayPayには、自治会・町内会向けの専用サービスがあります。条件を満たした自治会・町内会なら、
初期導入費 0円/月額利用料 0円/決済システム利用料 0円 なのです。
通常のお店がPayPayを導入する場合とは違い、自治会・町内会については特別な条件が設定されています。
しかも町会費だけではなく、自治会・町内会自身が開催する祭りなどでの商品・サービスの支払いにも利用できます。
一方で注意点もあります。PayPayでは寄付の決済には利用できません。
ですから祭礼で考える場合は、「祭礼会費=奉納金=寄付金」なので、これらの集金はできないということです。
参考2)東京都は町会費のキャッシュレス化を助成(リンク)
実は行政もすでに動き始めています。東京都は町会・自治会のデジタル化を支援しており、2026年度の「町会・自治会デジタル化推進助成」では、QRコード決済やオンライン・クレジットカード決済による町会費徴収も対象になっています。対象となる取組については、最長12か月、助成率10分の10という制度です。
つまり自治会費のキャッシュレス化は、すでに「できるかどうかを議論する段階」ではなく、「どうやって地域に普及させるか」という段階に入りつつあります。
ここで一番大切なのは、キャッシュレス化=現金廃止ではないということです。現金で払いたい人は現金。銀行振込がいい人は振込。PayPayがいい人はPayPay。クレジットカードがいい人はカード。選択肢を増やせばいいだけです。
例えば500世帯の町会で200世帯がキャッシュレスになれば、それだけで200軒分の集金作業がなくなります。現金を触る量も減ります。集計作業も減ります。役員宅で現金を保管するリスクも減ります。銀行へ現金を持っていく作業も減ります。そして何より、班長や組長が何度も各家庭を訪問する必要がなくなります。
町会・自治会の最大の問題の一つは、役員のなり手不足です。「町会活動そのものが嫌だ」という人ばかりではないと思います。
・仕事をしながら町会費を集めて回る
・回覧板を配る
・書類を作る
・現金を数える
・銀行へ行く
こうした細かな仕事が大量に残っていることが、役員を引き受けたくない理由の一つになっているのではないでしょうか。
そう考えると、町会費のキャッシュレス化は単なる支払方法の話ではありません。「住民がスマートフォンで簡単に払えるようにしましょう」というだけのDXでもありません。むしろ「班長・組長を現金集金から解放する」ためのDXです。
だから私は、各町会がそれぞれ勉強して、それぞれ決済事業者を探し、それぞれ契約するという形にする必要はないと思っています。
行政が少し手助けすればいい。例えば、
・利用できる決済サービスの比較表を作る
・導入方法をマニュアル化する
・町会規約や会計処理のひな型を作る
・高齢者向けの登録相談会を開催する
・必要なら初年度のシステム費を助成する
・町会役員向けの説明会を開催する
これだけでも導入する町会はかなり増えるのではないでしょうか。
そして、最初から100%キャッシュレスを目指す必要もありません。最初の年は10%でもいい。翌年20%。その次は30%。柏市の事例のように、利用する住民が毎年少しずつ増えていけばいいのです。
日本全国には非常に多くの自治会・町内会があります。そこで今なお膨大な時間を使って、「現金を集める」という作業が行われています。一つ一つは小さな作業ですが、全国で考えれば相当な時間です。しかも、その仕事を担っているのは地域のボランティアや高齢の役員だったりします。
キャッシュレス化というと、どうしても「スマートフォンを使える人のための便利なサービス」という話になりがちです。でも町会費については、少し違うと思います。払う人を便利にするだけではなく、集める人を楽にする。こちらの効果のほうが、実は大きいのではないでしょうか。
町会・自治会の担い手不足が問題になっている今だからこそ、こういう小さなところから地域活動の負担を減らしていく。これは一度、行政として本格的に検討してみても良いテーマだと思います。
最後に回顧録)
キャッシュレスの地域普及という話になると、私が思い出すのが沖縄です。
沖縄ではかなり早い時期から電子マネーEdyが普及しました。2005年にはリウボウ、リウボウストア、沖縄ファミリーマートなどで大規模にEdyが導入され、その後スーパー、コンビニ、飲食店、ガソリンスタンド、観光施設などへ急速に利用場所が広がりました。2006年には県内約1,000店舗、2007年には約2,600店舗まで拡大しています。
沖縄はアメリカ統治時代が長かったこともあり、クレジットカードなどへの心理的な抵抗が比較的小さかったのではないか、と個人的には感じています。
ただし、これについてはEdy普及との直接的な因果関係を示す資料を確認できたわけではありません。それよりも確実に言えるのは、「使える場所が増えると、使う人も増える」ということです。
スーパーで使う。コンビニで使う。飲食店で使う。ガソリンスタンドで使う。そうすると特別な「キャッシュレス」というものではなくなり、単なる日常の支払手段になります。
これは町会でも同じではないでしょうか。最初は町会費だけ。次に盆踊り。夏祭りの焼きそばや飲み物。地域イベントの参加費。そうやって地域の中で使う機会を増やしていけば、「PayPayなら使ったことがある」という高齢者も自然に増えていくと思います。
│地域活動









