2026年09月01日 10:46
「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」を観て来ました
※ネタバレアリです。映画を観ていない方は、読まない方が良いかもです。予告編に出ている部分で言うと、ちいかわ達は「チラシを読んだあなた 特別な島へご招待」というチラシを目にして、島へと向かいます。そこで依頼されたのは「とある生き物の討伐」。そして、ちいかわ達は島を守るために立ち上がる。といったお話しです。以下はネタバレです。
この物語に出てくるのは、「島の人々」「島にやって来た謎の巨大生物と3人組の人魚達」「ちいかわ達」、そして島で飲食店を営む「島二郎」くらいです。そして重要なのは、この登場キャラクター達の中に、最初から明確な悪者がいないことです。
ところが、物語では血を血でぬぐうような激しい戦いが繰り広げられます。
そもそもの発端は、平和な離島に謎の巨大生物と人魚達がやって来たことでした。それどころか仲良く暮らしていたのです。
ところが巨大生物が、自分自身の巨大さ、そして自分が持つ力の強大さを理解しないまま行動した結果、島の仲良し2人組のうち1人が、予想もしない形で瀕死のダメージを受けてしまいます。
そこで、もう1人の島民が友達を助ける方法を探していたところ、手持ちの書籍に「人魚の肉を食べると永遠の命が手に入る」ということが書いてあったことから、瀕死の仲間を人魚の肉で生還させることを計画します。
その計画はしるこサンドで人魚の1人をおびき寄せて殺して食べさせるというもの。そして計画は成功、友達も無事回復します。ここだけを見れば、「大切な仲間を助けたかった」という話しでもあります。しかし、そのために何の罪もない人魚を殺して食べています。
そして、それに気づいた巨大生物が、人魚を食べた島民を探し始めます。ところが誰も白状しません。すると巨大生物は、犯人を特定するのではなく、島民を次々と襲い、食べ始めます。
困り果てた島民達は、自分達では対処できない巨大生物を討伐してくれる誰かを集めるため、島への招待を装ったチラシをまき、それを見てやって来たのが、ちいかわ達だったというわけです。
・巨大生物は、自分の持つ強大な力を理解しないまま島民に瀕死の重傷を負わせる。
・重傷を負わされた島民は、巨大生物へ反撃せず、人魚を殺して食べる。
・人魚を殺された巨大生物は、不特定多数の島民を襲って食べる。
・島民達は、外部から戦闘要員を呼び寄せ、巨大生物を討伐しようとする。
こうやって整理すると、かなり恐ろしい話しです。誰も最初から戦争をしたかったわけではないのに、どんどん事態がエスカレートしていき、その局面ごとに「誰が被害者で、誰が加害者なのか」まで入れ替わっていきます。ちいかわ達の立場も、物語の進行とともに激しく変わります。
とはいえ最終的には、いつものように討伐に成功。島の特産品をもらって帰っていきます。巨大生物はいなくなり、これ以上の殺戮も起きない。私は「これで、めでたしめでたしなのかな」と思っていました。そして映画はエンドロールへと進みました。
ところが、この映画が本当に恐ろしいのはエンドロールが終わってからでした。
人魚を食べた島民2人は島を抜け出し、別の離島へと向かいます。二人だけの安住の地を見つけたかのように見えた直後、そこへ巨大生物と人魚が追いかけていくシーンに切り替わり、映画は終わります。
つまり、戦いは終わっていなかったのです。
憎しみも、報復も、何も終わっていない。
考えてみれば、これは戦争そのものではないでしょうか。
最初から悪者がいたわけではありません。
・巨大生物には島民を傷つけようという明確な悪意があったわけではない。
・島民は仲間を助けたかった。
・人魚は何もしていないのに殺された。
・巨大生物は仲間を食べられた。
・島民達は巨大生物に次々と仲間を食べられた。
それぞれに、それぞれの事情と理由があります。
ところが、一度「やられたからやり返す」が始まってしまうと、最初の原因とは関係のない者まで巻き込まれ、被害者が加害者になり、その加害者が次の被害者を生み出していく。
そして当事者だけでは収拾できなくなり、外部から戦う人間まで呼び寄せる。その意味では、この映画における「ちいかわ達」は、傭兵のようにも見えます。
島民から提示された情報を信じて島へ向かい、そこで「討伐」という仕事を依頼される。しかも、ちいかわ達は最初から事件の全容を知らされていたわけではありません。自分達が何の争いに巻き込まれているのかよく分からないまま、目の前にいる「討伐対象」と戦うことになります。
もっと現代的で身近なたとえをするなら、闇バイトやオレオレ詐欺の「かけ子」のような立場にも見えます。
「簡単で儲かる仕事があります」
「ここへ来てください」
「これをやってください」
と言われて現場へ行ったら、実はその背景には自分の知らない巨大な事件があり、自分もその一部に組み込まれていた。
もちろん、これは「ちいかわ」の物語です。かわいいキャラクター達が活躍する作品です。しかし、そのかわいい絵柄を一度取り払って、物語の構造だけを並べてみると、まったく違ったものが見えてきます。
私には、この映画が描いているものは「戦争」に見えました。しかも恐ろしいのは、悪者が戦争を始める話しではありません。普通に暮らしていた者達が、それぞれの事情、それぞれの正義、それぞれの大切なものを守ろうとした結果、殺し合いになっていく話しです。
「ちいかわ」のかわいい世界で描かれているからこそ、逆にその構造の恐ろしさが際立って見えた映画でした。
最後に、本ブログには「島で飲食店を営む島二郎」の話しがぜんぜん出て来ませんが、映画では大活躍しております。
なお、9月5日から入場者特典第4弾として「チャームミニフィギュア」が配布開始となるそうです。今回は島二郎、巨大生物セイレーン、島の仲良し2人組のヒトハ&フタバの4キャラクターだそうですので、まだご覧になられて無い方は、ぜひ映画館でご覧ください。









