2026年08月16日 05:08

なぜ車は冠水道路に入ってしまうのか/その前後が普通に通れるという盲点

kansui大雨のニュースを見ると、道路が完全に水につかり、車が立ち往生している映像が繰り返し流れます。こうした映像だけを見ていると、「この地域一帯が水没しているのだろう」と思ってしまいがちですが、実際にはそうとは限りません。

道路冠水というのは、意外なほど局地的に発生します。なぜなら、水は低い場所へ流れるからです。

同じ道路でも、わずかな高低差によって水が集まる場所と、ほとんど水がたまらない場所があります。そのため、冠水している場所の10m、20m手前までは普通に車が走れていて、そこだけ突然「池」のようになっていることがあります。

テレビでは、当然ながら最も冠水している場所を中心に撮影します。水につかった車、立ち往生する車、タイヤの半分以上まで水につかりながら走る車。映像としては非常に分かりやすいのですが、カメラを少し引いて「その道路の前後がどうなっているのか」まで映すことはあまりありません。

しかし、車を運転する側にとって重要なのは、むしろ映っていない前後だと思います。「ここまで普通に走って来られたのだから、この先も大丈夫だろう」これが危ないのです。

私の家の近所にある戸越銀座商店街は、もともと川が流れていた低地です。大雨が降ると周辺の高い場所から水が集まりやすく、昨年9月11日の豪雨では、側溝に流れ切らなかった雨水で、東急池上線の線路付近に水が大量に溜まったことがありました。

幸い、その時の猛烈な雨は1時間ほどで収まり、水没車は出ませんでしたが、車がバンバン走る場所だったら、何台か水没していてもまったく不思議ではない状況でした。

そして重要なのは、そこへ至るまでの道路すべてが冠水していたわけではないということです。普通に走って来たら、突然目の前に深い冠水箇所が現れる。都市部の内水氾濫では、こういうことが起こりえます。

例えば渋谷。地名の通り渋谷駅周辺は谷底に位置しています。宇田川と渋谷川が合流する場所で、川は暗渠になって見えませんが、地形は昔のままなので、大雨のたびに駅周辺やスクランブル交差点付近が冠水するのは日常茶飯事です。

また五反田駅周辺も同様です。大雨のたびに目黒川が氾濫し、大規模な浸水被害が多発したため、1991年から2002年にかけて旧荏原青果市場の跡地を活用した荏原調節池を約320億円かけて整備したことで、水害の発生は抑えられていますが、今でも豪雨になるとたびたび氾濫警戒サイレンが鳴ります。

普段は大量の車や人が行き交っている場所でも、猛烈な雨が降れば、周囲から流れ込んだ雨水によって短時間で状況が一変することがあります。

当たり前ですが、道路が冠水するほどの雨なら、冠水前からとんでもない量の雨が降っているわけで、車を運転していればワイパーを最速にしても前が見えないぐらいの状態です。つまり、普通に考えれば「この雨なら冠水している場所があってもおかしくない」と思えるはずなのです。

ところが、悲しいかなそうはなりません。「ここまで通れたから大丈夫」「前の車が走っているから大丈夫」となるのです。

しかも、冠水場所は窪んだ場所だったり、各所から水が流入してくる交点だったりするので、その前後は高い場所に位置していますから、冠水場所の手前からその先に車が走っているのを見ると、平らな道に見えるのです。

そして、「向こう側にも車がいるのだから、この程度なら通れるだろう」と考えてしまうわけです。

冠水した道路は、外から見ただけでは水深が分かりません。普段から走り慣れている道路であっても、水面が道路を覆ってしまえば、どこから急に深くなっているのかも分かりません。さらに、マンホールの蓋が外れていたり、側溝との境目が見えなくなっていたりする可能性もあります。

そして、一度冠水箇所へ入ってしまえば、途中で「やっぱり深い」と気付いても、簡単には引き返せません。エンジンが水を吸い込めば停止する可能性がありますし、水深が20cmに達すれば車体が浮き、ハンドルやブレーキが効かなくなる危険もあります。

常識を超えた大雨に遭遇したら、絶対的に安全が確認できる状況でなければ車を走らせない。

これから全国各地で突然の豪雨が増える時代、このことだけでも頭の片隅に置いておけば、冠水道路へ突っ込んでしまうリスクはかなり減らせるのではないかと思ってます。

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