2026年07月25日 02:38
BYD初の軽EV「ラッコ」7月28日発売
中国の自動車メーカー「BYD」が、日本市場向けに専用開発した軽EV「ラッコ」の発売を間近に控えています。BYDはEVの基幹部品と駆動用バッテリーに「8年・16万km保証」を設定しており、購入後の高額修理に対する不安は比較的小さいと言えそうです。
軽EV市場で先行するのは、2022年に発売された日産サクラ(兄弟車の三菱eKクロスEV)。そして2025年にはホンダがN-ONE e:を投入しました。航続距離を見ると、サクラは180km、N-ONE e:は295km。
今回発表されるラッコは、この2車種を明らかに意識した構成になっています。バッテリー容量を2種類用意し、航続距離はエントリーモデル「200」が約200km、上位グレード「300」が約300km。ちょうどサクラとN-ONE e:の中間ではなく、それぞれを真正面から狙った設定です。
しかも、日本メーカーの軽EVが比較的背の低いスタイルなのに対し、ラッコは人気の高いハイトワゴン。後席は電動両側スライドドアを採用し、ファミリー層を強く意識したパッケージとなっています。
価格は一番安い「200」が250万円前後、最上級グレードの「300 Premium」が300万円程度と予想されており、「中国車だから安い」というイメージとは少し異なります。
高度運転支援システムを標準装備し、軽自動車としては珍しい4輪ディスクブレーキまで採用するなど、装備面はかなり充実。すでに各所の展示会に出て来ていた量産試作車を見る限り、クオリティは非常に高く、いい意味で軽自動車ならこの程度でいいという割り切りが分かって無い感じです。
BYDはすでに全国77拠点まで販売網を拡大しており、購入後のメンテナンス体制も以前とは比べものにならないほど整備されました。その意味では、日本市場への本気度は十分伝わってきます。
ただし、ここからがBYDにとって本当の勝負でしょう。軽自動車は世界でもほぼ日本だけの規格です。つまり、このプラットフォームは海外へ横展開することが難しく、開発費を回収するには日本国内で一定の販売台数を確保しなければなりません。
一般的に、自動車メーカーが新しい専用プラットフォームへの投資を回収するには、世界全体で50万〜100万台規模の販売が一つの目安と言われています。しかし、軽自動車は日本専用車であるため、設備投資をどこまで抑えられるかが採算性を大きく左右することになります。
仮に軽自動車専用ラインへの投資を2,000億円と仮定し、1台あたり10万円ずつ投資を回収するとすれば、単純計算では20万台の販売が必要になります。
一方で、既存設備を活用するなどして投資額を1,500億円程度まで抑え、1台あたり30万円を回収できると仮定すれば、必要販売台数は約5万台まで下がります。では、日本市場はどうでしょうか。
2025年の軽自動車販売を見ると、年間10万台を超えたのはホンダN-BOX、スズキ・スペーシア、ダイハツ・タント、ダイハツ・ムーヴの4車種のみ。10位のダイハツ・ミラでも約5万6千台でした。
一方、EV市場に目を向けると、2025年のBYD乗用車の国内新規登録台数は3,742台。輸入EVではテスラが約10,600台、一番売れた軽EVの日産サクラでも約14,000台でした。
こうした数字を見る限り、ラッコが年間1万台販売できれば大成功と言えるのではないでしょうか。逆に言えば、それだけ日本市場は簡単ではないということです。
もっとも、私はBYDがこの軽EVだけで終わるとは思っていません。もし日本市場で一定の販売実績を積み、軽自動車の生産・販売ノウハウを蓄積できれば、その先の展開も考えられます。
現時点のラッコはEV専用設計であり、エンジンを搭載するスペースはありません。しかし将来的には、軽自動車市場で得た知見を生かして、ガソリン車やハイブリッド車、あるいはPHEVなど、別のパワートレインを採用した新たな軽自動車を投入してくる可能性は十分あると私は見ています。
これまで日本の軽自動車市場は、海外メーカーがほとんど参入できない「最後の聖域」と言われてきました。しかし、その市場へ世界最大級のEVメーカーが本気で乗り込んできます。
ラッコが成功するのか、それとも日本市場の壁に跳ね返されるのか。その結果次第では、日本メーカーの軽自動車戦略にも少なからず影響を与えることになるでしょう。
まずは発売後の反応を見守りたいと思いますが、少なくとも私は、自宅にも置けるサイズのEVということもありこの1台には非常に興味を持っています。そんなわけで試乗してみます。









