2026年07月24日 06:25
円相場と年収「円39年ぶり163円台」に大いなる疑問
じつは、現在の1ドル=160円台という円相場は、私にとって初めて見る水準ではありません。1986年は、私が初めてカナダ・バンクーバーを訪問した年です。当時開催されていたバンクーバー万博を見るためだったのですが、シアトル経由で現地へ向かった頃が、まさに1ドル=160円前後でした。
つまり、報道で「円39年ぶり163円台」と出ているように、為替レートだけを見れば今とそれほど変わりません。ところが、実際にアメリカで物を買うとなると、話はまったく違います。
例えば、マクドナルドのビッグマック。1986年当時、アメリカのビッグマック単品は約1ドル60セントでした。1ドル=160円で計算すると256円です。ところが、今のビッグマックは6ドル以上。仮に6ドルとしても960円になります。同じ1ドル=160円でも、円換算した価格は約3.75倍です。
1985年にはプラザ合意ってのがありまして、それまで1ドル=250円ぐらいが当たり前だったドル円相場が、一気に円高方向へ動きました。私がアメリカを経由してカナダへ行った1986年には、1ドル=160円前後まで円高が進んでいたわけです。ですから、当時アメリカの物が何でも安く感じられたのは事実です。
仮にビッグマック1.5ドルをプラザ合意前の1ドル=250円で計算しても375円。それが今では6ドルとして960円ですから、それでも約2.56倍になります。
コカ・コーラでも比較してみます。スーパーマーケットでコカ・コーラの16オンス(=約473ml)サイズの6本パックを買う場合、1986年は約3ドル、今は約5.4ドル。1本あたりにすると50セントと90セントです。1ドル=160円で計算すると、80円と144円。こちらは約1.8倍です。
「昔も1ドル=160円だったのだから、今の円安もそれほど異常ではない」そんな話を時々耳にします。しかし、為替レートだけを40年前と比較しても、あまり意味がありません。重要なのは、その160円で何が買えるのかということです。
40年前と比較して、日本人の平均年収が3.75倍/2.56倍/1.8倍になっているのであれば、海外の物価が上がっていても、それほど恐れる必要はないのかもしれません。しかし、1986年の平均年収は約361万円。それに対して2025年は478万円ですから、上昇幅は約1.32倍でしかありません。
では、今の日本円1万円をアメリカへ持って行ったら、何ができるのでしょうか。1ドル=163円なら、1万円は約61.3ドルです。しかし、実際に現金へ両替する場合のレートなども考えて、ここでは60ドルとしてみましょう。
ビッグマック・フライドポテト・ドリンクのセットは税別約10ドルなので1,630円。たった6回で1万円です。
ファーストフードではない店内飲食のレストランになると、さらに負担は大きくなります。アメリカでは州や地域によって異なる売上税がかかり、テーブルサービスのレストランでは一般的に15〜20%程度のチップも必要になります。
例えば、ラーメン店で15ドルの比較的安いメニューを注文したとします。税金などを含めて17ドル程度になり、さらにチップを加えれば20ドル前後。ラーメン3杯で1万円です。
「39年ぶりの1ドル=163円」こう聞くと、単純に「39年前と同じ水準まで円安になった」と考えてしまいます。しかし、実際にはまったく違うのではないでしょうか。
1986年の1ドル=160円と、現在の1ドル=160円台。
為替レートという数字は同じでも、その間にアメリカの物価は大きく上昇しました。一方、日本人の平均年収は約361万円から478万円と、約1.32倍の上昇でしかありません。つまり、日本人から見た海外での「円の購買力」という意味では、39年前とは比較にならないほど厳しくなっているわけです。
だから私は、「39年ぶりの1ドル=163円」という数字だけを見て、「昔も同じくらいだったから大丈夫」とは、とても思えません。
問題は、円の価値を決めるのは「1ドル=160円」という数字だけではありません。その160円で「世界で何が買えるのか」「世界の物価が上昇する間に日本人の給料はどれだけ増えたのか」この二つを一緒に考えて初めて、今の「円の本当の価値」が見えてくるのだと思います。
こんなことを書いていますが、今日にも1ドル=164円台も見える相場になっています。昨年末は156円でした。すでに5%以上の変化。日本は燃料も食料も輸入頼りの国ですから、今後もインフレは進み、5%の賃金上昇効果は瞬殺されるでしょう。
とっとと日銀が基準金利を5%ぐらいまで上げないと、この国は壊滅するんじゃないかと思っている私です。









