2026年07月21日 06:05

住宅ローン変動金利の「0.25%刻みで上がる」は誤解

スクリーンショット 2026-07-21 055342「日銀が0.25%ずつ利上げしているのだから、自分の住宅ローンの変動金利も0.25%ずつしか上がらないはず」ここ最近の利上げ局面を見て、そう語っているYouTubeチャンネルを多数見かけます。しかし、この認識は非常に危険な誤解のように感じます。

そもそも住宅ローンの「変動金利」は、日銀の政策金利と1対1で連動するものではありません。金利を最終的に決定するのは、あなたがお金を借りようとしている(あるいは借りている)金融機関のルールと経営戦略です。

今回は、この変動金利の仕組みを正しく紐解き、「新規借入を検討している方」と「すでに借りている方」の2つの視点から、これから直面するリスクと具体的な対策を考えてみたいと思います。

これから住宅ローンを組む方が最も警戒すべきなのは、銀行が提示する「金利引下げ幅(優遇幅)」の縮小です。なぜなら、住宅ローンの変動金利は、ローンの定価にあたる「基準金利」から、顧客ごとに適用される「金利引下げ幅」を差し引いた「適用金利(実際の支払金利)」で決まるからです。

銀行間で顧客獲得競争が激しい時期は、この金利引下げ幅が大きく設定されるため、私たちは超低金利の恩恵を受けられます。しかし、市場環境が変われば、銀行はこの「割引率」を変更します。

例えば「基準金利3.0%/金利引下げ幅▲2.0%/適用金利1.0%」の住宅ローンがあったとします。銀行が基準金利を0.25%引き上げるだけなら、「基準金利3.25%/金利引下げ幅▲2.0%/適用金利1.25%」です。

でも基準金利上昇時に、金融機関が「他で儲かるので住宅ローン比率を下げよう」と考えた場合、新規顧客向けの金利引下げ幅を縮小してくる可能性は十分にあり得ます。「基準金利3.25%/金利引下げ幅▲1.5%/適用金利1.75%」なんてのは、普通に想定内の事態でしょう。

日銀の利上げは0.25%なのに、これから住宅ローンを借りる人の適用金利は0.75%上昇するわけです。

新規借入向け金利は、各金融機関の経営戦略によって日常的に変動しているのが実態です。つまり、「日銀が0.25%しか利上げしていないのだから、住宅ローン金利も0.25%しか上がらない」という理屈は、少なくとも新規で住宅ローンを借りる人には当てはまりません。

しかも、住宅ローン商品によって金利引下げ幅のルールもバラバラです。借入期間中ずっと一定の金利引下げ幅が適用される商品もあれば、固定金利選択型などでは「当初5年」「当初10年」といった期間限定で大きな引下げ幅が設定され、期間終了後に引下げ幅が変わる商品もあります。

最初の返済額だけを見て住宅ローンを借りてしまい、数年後に優遇幅が縮小すれば、返済額が一気に上昇する危険もあります。

また、金利上昇局面では「本審査が通った時には低金利だったのに、実際の融資実行時には適用金利が大幅に上がっていた」ということも起こり得ます。住宅ローンは必ずしも「申し込んだ日の金利」が適用されるわけではなく、融資実行時の金利が適用される金融機関もあるからです。

そんなわけで、これからローンを組む際には、一つの金融機関だけに絞り込まず、複数の金融機関を比較しておくべきでしょう。

そして、「いつの金利が適用されるのか」「金利引下げ幅は全期間固定なのか」「当初期間だけの優遇なのか」「基準金利は何を基準に、いつ見直されるのか」こうした契約条件を必ず確認しておく必要があります。

一方、すでに変動金利で住宅ローンを借りている方については、毎月の返済額が急激に増えない「5年ルール&125%ルール」があるという話を以前のブログに書きました。もちろん、すべての変動金利型住宅ローンにこのルールがあるわけではありません。そして、このルールがあったとしても、金利そのものの上昇を抑えてくれるわけでもありません。

返済額が据え置かれている間に金利が上昇すれば、毎月の返済額に占める利息の割合が増え、元金が全然減らないという事態に陥る危険性があります。

それ以外にも確認しておきたいのが、自分の契約している住宅ローンの「金利引下げ幅」です。現在の引下げ幅は完済まで維持される契約なのか。一定期間が経過すると変わるのか。基準金利が上昇した場合、自分の適用金利がどのように変わる仕組みなのか。一度、契約書や約款を引っ張り出して確認してみた方がいいでしょう。

長きにわたる超低金利環境のせいで、私たちの頭には「変動金利は上がっても少しずつ」という根拠のない安心感が染み付いています。しかし、それは過去の経験則に過ぎません。

日銀が決めるのは、あくまで「日銀の政策金利」です。あなたの住宅ローン金利がどのように決まり、いつ見直されるのかを決めているのは、あなたがお金を借りている金融機関との契約です。

次の日銀の発表に一喜一憂するのではなく、まずは自分が結ぼうとしている、あるいはすでに結んでいる「契約のルール」を正しく把握することから始めるのがいいんじゃないかと思っている私です。

最後に、いまだに「なぜ住宅ローンを金利4%・10年固定にしたのか?」と聞かれます。

これまで私は、「住宅ローン最後の10年は元金が少ない」「他行への借り換えは手数料がムダ」「60歳目前で新たに団体信用生命保険の審査を通すのは簡単ではない」「将来の金利上昇リスクをこれ以上負いたくない」と説明してきました。それでも、なかなか理解してもらえませんでした。

ところが、最近は次のように説明すると、多くの方に納得してもらえることが分かりました。

「絶対に貸し倒れのない10年物国債の金利が3%近いのに、なんで貸し倒れリスクのある住宅ローンを金利3%未満で貸し続ける必要があるんじゃい?と考えた時に、住宅ローン金利が4%を超える時代が来る可能性は十分にあると思ったから」。それ以上でも、それ以下でもありません。

これまでの日本では「住宅ローン金利は低くて当たり前」でした。しかし、金利がある世界では、お金を貸す側も当然ながら「いくらの金利なら貸す価値があるのか」を考えます。

国に10年間お金を貸して3%近い金利が得られる時代に、民間金融機関が、個人に対して長期間超低金利で住宅資金を貸し続けることが本当に当たり前なのか。私は、そこを考えました。

日銀が次に0.25%上げるのかどうかよりも、「金利のある世界に戻った」という大きな変化の方が、住宅ローンを考える上でははるかに重要なのではないでしょうか。私はそう思っています。

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