2026年07月02日 07:31
MAGAの代表格「アメリカ製造業」はどうなった?
「トランプ氏は「Make America Great Again(MAGA)」を合言葉に、「アメリカを世界最強の製造業国家に戻す」と訴え、多くの支持を集めて再び大統領に就任しました。確かに、その昔のアメリカは「世界の工場」と呼ぶにふさわしい製造業大国でした。
航空機ではボーイング、マクダネル・ダグラス、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン。自動車ではGM、フォード、クライスラー。さらにキャタピラー、GE、ウェスティングハウス、デュポン、3Mなど、世界を代表する企業が数多く存在していました。
私は1992年、当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領(父)が、アメリカの自動車メーカー首脳らとともに来日した際、忘れられない経験をしました。
奈良県にオープンする日本初のトイザらスのテープカット式典で、私はオープニング演出を担当していました。ところが当日、大統領の来場が決まり、現場は一変します。
シークレットサービスからは「大統領が来るのにハサミを大量に持ち込むな!」「そのくす玉を開けて中身を見せろ!」「見せられないなら撤去しろ!」と次々に指示が飛び、最後はスタッフ全員が現場から追い出されてしまいました。
こちらからすれば、依頼された演出を準備していただけなのですが、それだけ警備は厳重だったということなのでしょう。
当時の来日目的の一つは、日本市場でアメリカ車の販売拡大を働きかけることでした。
一方で、日本へトイザらスを持ち込んだ藤田田さんは、日本マクドナルドの社長でもありましたから、「日本でどんどん店舗を増やしてくれ」という期待も寄せられていたのでしょう。
この来日では、晩餐会でブッシュ大統領が体調を崩し、宮沢喜一首相の膝元で倒れ込むというハプニングもありました。しかし、その一方で現在の日米同盟の礎となる「日米グローバル・パートナーシップに関する東京宣言」が調印された歴史的な訪問でもありました。
私の印象では、共和党政権は安全保障や経済面で日本に費用負担を求めることはあっても、比較的「取引型」の交渉が多いように感じます。
一方、民主党政権では市場開放や通商問題で厳しい要求を受ける場面が少なくありませんでした。
クリントン政権時代には日米自動車交渉が激化し、「100%関税」の可能性まで示され、日本ではトヨタがGMのキャバリエをOEM販売するという、今では信じられないような出来事もありました。
それはさておき、トランプ氏が再び大統領に就任して約1年。
現在のアメリカ製造業はどうなっているのでしょうか。
AIに「トランプ政権下のアメリカ製造業の現状を教えてください」と質問してみると、おおむね次のような整理になりました。
### ■ 航空産業
・関税強化によりアルミや部材などのコストが上昇
・中国との関係悪化で受注環境が厳しくなる分野もある
・一方、防衛・宇宙関連は引き続き大きな市場を維持
### ■ 自動車産業
・メキシコやカナダとのサプライチェーンが関税の影響を受け、生産コストが上昇
・EV投資の見直しが進み、各社とも戦略を再構築
・ガソリン車回帰を歓迎する声がある一方、将来的な技術競争への懸念も残る
### ■ 建設・農業機械
・国内工場への投資や設備更新は追い風
・しかし、各国の報復関税により輸出向け農機は厳しい市場もある
### ■ 化学・エネルギー
・環境規制緩和によるコスト低減効果
・原油・天然ガス開発の促進でエネルギーコストは比較的有利
・一方で、環境基準が厳しい海外市場への対応は課題となる
こうして2026年のアメリカ製造業を見てみると、1992年当時の「世界中にアメリカ製品を売り込む」という時代から、大きく方向性が変わったことが分かります。
かつては海外市場で勝負することを重視していましたが、現在は高い関税や国内投資を通じて、「まず国内の製造業を立て直す」という政策色が強くなっています。
もちろん、その恩恵を受けている企業や業界もあります。しかし一方で、国際競争や技術革新のスピードについていけるのか、海外市場との距離が広がらないかといった懸念も指摘されています。
1992年、私からくす玉を取り上げ、現場から追い払った屈強なシークレットサービスたちは、「アメリカは世界の中心だ」という圧倒的な自信に満ちあふれていました。
あれから34年。
今のアメリカは、再び世界へ打って出るために国内を鍛え直しているのか。それとも、高い壁を築いて自国市場を守る方向へ向かっているのか。
MAGA(Make America Great Again)が本当にアメリカ製造業を「Great Again」にするのかどうか。その答えが出るには、もう少し時間が必要でしょう。
そして、日本の道路を再び巨大なアメ車が当たり前に走る日も……少なくとも今のところは、まだ少し先の話になりそうです。









